部屋に入った瞬間、立つ位置で上下が決まってしまう感じを覚えている人がいる。
何も言われていないのに、自然と背中が丸まり、目線が下がり、呼吸の仕方まで変わってしまうあの間だ。
相手が男だと分かった時点で、空気の重さが変わる。
声を荒げられるわけでもなく、触れられるわけでもないのに、こちらが責められる側だと身体が先に理解してしまう。
昔一度だけかもしれないし、何度も経験しているかもしれないが、男に見下ろされ、評価され、逃げ場のない位置に置かれたときの感覚は、意外と簡単に戻ってくる。
昼の時間帯、豊橋の街が普通に動いている中で、こちらだけが静かに縮こまっていく感じ。
準備も説明もなく、ただ視線と距離だけで立場が固定されていく。
抵抗しようと思えばできるはずなのに、しないほうを選んでしまうあの癖。
言い訳も理由も要らず、責められる側に収まったほうが楽だと身体が知っている。
男同士だからこそ誤魔化しがきかず、逃げ道も作れない。
その状態を思い出してしまったなら、もう十分だ。
分かる人だけが、そのまま静かに立ち止まればいい。