デルさん:
これには事後談がありまして。
試験、受けませんでした。
身体がこわばって、三田の駅を出ることできませんでした。
世が世なら切腹ものの失態です。
恥じをそそぐため潔く死ぬべきかとも考えましたが、こんな薄っぺらい命では捨てる資格も価値もなさそうだし、
そもそも実行する勇気すら起こりません。
周りの人々のさげすむ視線とため息をひたすら感じます。
性根が腐っているというか、腹が据わっていないというか・・・・とにかく、見識を持つとか責任を引き受けるとか・目的を立てるといったことを、いつしか僕はまるでできなくなってしまったようです。
そのくせ自尊心だけは人に倍して高いわけですから始末に負えません。
つくづく自分を見下げ果てました。ショックというより、ただただ恥ずかしさで
いっぱいです。
しばらく工事現場や倉庫での日雇いの仕事に就くつもりですが、ドイツ語・英語
文学は一日とて欠かすことなく触れるようにしていきます。
土性骨の通った人間になりたいのです。「あえかで美しい人」「誠実で聡明な青年」も嫌いではないのですが、僕自身は「野蛮で精錬された人士」なりたがって
いるような気がしています。
今の僕は「気息えんえんたる見苦しいやから」にすぎませんね。
なかなか周囲の仲間の期待に応えることができません。