かつて、外国籍を理由に国民年金に加入できなかった
朝鮮籍1世の女性の身の上話に、涙が流れた。
大学で移民問題などについて学んできた女子学生が
卒業論文のテーマに選んだのは在日韓国・朝鮮人の「無年金」問題。「同じ日本に住んでいるのに、
どうして待遇が違うの」。
胸に痛みを感じながら、論文の準備を続けている。
卒論に取り組んでいるのは、南山大学総合政策学部4年生の中島智子さん。名古屋市出身で、
高校卒業後に、大阪府枚方市にある関西外国語大学の短期大学部に進んだ。
大阪には、生野のコリアンタウンなど在日が多く暮らす地域が集まる。中島さんにも在日の
友人ができた。親しくなるにつれて、在日の歴史や差別の問題についても話してくれるようになり、
無年金問題も初めて知った。
「もっと深く学びたい」。
そう考え、短大卒業後、南山大の3年生に編入。今年4年生になり、
卒論のテーマには、迷うことなく無年金問題を選んだ。
8月、名古屋市北区にあるデイサービスセンター「いこいのマダン」を訪れた。
在日の高齢者ら
約30人が利用しており、現在の生活ぶりなどを聞かせてもらった。
90代の1世の女性は、「同居している娘の稼ぎだけが頼り」と話した。女性に年金収入はなく、
無年金の外国人向けに名古屋市が出している「外国人高齢者給付金」は月額1万円に過ぎない。
在日韓国・朝鮮人ら外国人は、1982年の国民年金法改正で国籍条項が撤廃されるまで
同年金に加入できず、86年の同法再改正時に60歳以上だった高齢者は無年金になった。
同じように年金受給資格のない日本人高齢者には、国が月額3万3816円の「老齢福祉年金」を
支給している。
兵庫県の場合、市町の外国人給付金に県が月額1万6900円を上乗せし、日本人への
老齢福祉年金とほぼ同額の給付金を実現しているが、愛知県はこうした助成も実施していない。
中島さんは「差別は昔だけの話だろうか。今でも、目に見えない差別が残っているのではないか」と思う。
(抜粋)