ベーシックインカム支持の理由
私がベーシックインカムを支持する大きな理由の一つは、これが「小さな政府」を実現する手段として有効だからだ。
年金や生活保護のような多数の役人が介在する行政サービスをベーシックインカムに置き換えると、
コスト面の効率が改善するし(たとえば社会保険庁の廃止)、役人の不透明な裁量を減らすことが出来る(たとえば生活保護の認定で)。
無条件でお金を配るわけだから、個人は自分の好む対象に支出することが出来るし、これを貯めることもできる。
全般的に自由度が拡大するし、貯蓄を持っていたら生活保護の支給を打ち切るというような、生活保護世帯に対する特定の暮らし方の強制のような事態が起こらない。
役人の権限も、人数も当然減ることになるから、役人の多く(心ある人は賛成するかも知れないが)や利益配分に関与したいタイプの政治家はベーシックインカムを好まないだろう。
今ひとつピンと来ない人がいるようなので、補足すると、ベーシックインカムと定率の所得税を組み合わせると、ミルトン・フリードマンが提唱した「負の所得税」(を含む税制)と同じになる。
たとえば、1人月5万円、年間60万円のベーシックインカムと30%の税率の所得税を組み合わせると、60万円÷0.3=200万円の所得で、ベーシックインカムと所得税が均衡し、200万円を中心として上下の所得の変化は7掛け(1−0.3)で可処分所得に反映することになる。
つまり、働いて稼ぐと所得が増えて経済的な生活は改善するから、ベーシックインカムの存在で労働のインセンティブが無くなるわけではない。
賃金に対してベーシックインカムがどのような影響を与えるかは微妙な問題だ。労働者側に多少なりとも「余裕」が生じるので、
安い賃金でキツイ仕事はしなくなるかも知れないが、
他方で、賃金が安くてもベーシックインカムと合わせると生活が成立するので、
安い賃金を受け入れるようになる効果もある。
何れにしても、ベーシックインカムがあると、労働者側で働く先を選ぶ際の自由度は(企業で働かないことも含めて)拡大しそうだ。
また、ベーシックインカムがあってもなくても、労働組合は無用だろう。
個々の労働者の権利を法的に明確に守ることが重要であり、これは現状と変わらない。