そのあと明智君には銭湯に行こうと誘われたが、丁重に断り家のシャワーで汗を流した。
「センパイと銭湯行きたかったなー」
シャワー浴びたあとコンビニで買ってきた酒もそこそこに進んだ頃、
ぶーぶー文句を言っていじける彼に、こめかみ辺りがピクリと揺れた。
「おまえなぁ、さっきから言ってることがホモっぽいぞ?」
「え!?そうっすかー?」
俺はこれ以上のノンケとの無邪気なやり取りは心臓に悪いと思って釘を刺したつもりだったが、彼はそんなの気にもせずにあっけらかんとしていた。
「やたらスキンシップ多いし、そういうこと言うし」
「えー、センパイ意識しすぎっすよー?」
立て続けに言おうとした俺に、彼の何気ない一言が逆に刺さった。
(……意識、しすぎ?)
そう考えると、確かに正論だった。
彼には仲の良いもの同士の遊びとか何気ないコミュニケーションの延長で、
それを勝手に俺は恋愛とか面倒なものに結び付けて一人で慌てて、それじゃあまるで、
「センパイこそ、俺に気があるとか?」
「!?」
気づいた瞬間、彼に言われてしまったこと。
それは俺に取って一番、言われたくない、気づかされたくないことだった。
「……」
俺は言葉が出ず、冗談として流せばいいのに固まってしまった。
「センパイ?まーたそんな怖い顔してー!」
明智君は、あははと笑いながら俺の腕をつんつんと突いてきた。
「……そんなわけ、ないだろ」
俺が力なく笑ってぼそりと返すと、明智君は聞いてるのか聞いてないのか「ありゃ、もうない」とか言いながら空缶を片付けている。
(どいつも、こいつも……)
その悪気のない姿とさっきの復讐心とが相まって、俺の中の何かがはじけとんだ。
「俺のこと、好き?」
明智君の目を見て問う。とろんとした顔をしている彼は、
「好きっすよぉ〜」
そう言ってだらしくなく笑いながら、予想通りの言葉を返してきた。
そして、俺は気持ち悪がられるのを覚悟して彼にすりよった。
「ふふふ、俺もぉ〜」
彼の胸に顔をうずめると、俺のいつもと違う様子に彼の身体が一瞬硬直したのが分かった。
ずっとずっと、したかったこと。
誰かの胸に擦り寄って、そのぬくもりを感じて、匂いを嗅いで、興奮して……。
同世代の人たちが、普通にやっていること。
でも自分には、大きな壁がいくつもいくつもありすぎて、できなかったこと。
俺は、思いっきり彼に甘えた声を出しながら擦り寄った。
「えっ、ちょ、ちょっとセンパイ!?」
当然、彼は戸惑っていた。
そりゃそうだ、いくら好きでも相手は男。
そうなるのが当然だ。でも、俺はそんなのお構いなしだった。
「ふふふ、ちょっとくらい良いじゃん?俺だって甘えたいんだよぉ」
ごろごろと腹のすかした猫のように、俺は彼の胸やお腹あたりに顔を押し付ける。
「く、くすぐったいっすよ!せ、センパイ」
彼が身を捩らす。
ふと股間に顔がぶつかると、彼の中心にあるソレは少し硬くなっていた。
「あれぇ?おっかしいなぁ」
「っ!?」
俺はあざとくも偶然ソレを見つけたかのようにして、彼に迫った。
「なんかこの辺が硬くなってるぞぉ?」
「ちょ、ちょっと!」
慌てて俺の身体をどかそうとする彼を、逆に押し倒した。
「だーめ、さっき俺をバカにした罰を与える!」
そういって俺は彼の股間に顔をうずめて、くすぐるようにして動かした。
「あっ、んっ、ちょっ!」
彼の抵抗も快感に負けているのか弱々しく、逆に股間のソレは勢い良く硬さを増した。
「男にされても、こうなっちゃうんだ……?明智君は」
「だ、ってセンパイがっ、エロ過ぎ……んんっ…」
さっきシャワーを浴びたから、かすかに残る石鹸と汗のにおい。
俺はズボンの上から感じる熱を手でまさぐりながら、彼に聞いた。
「これ、どうして欲しい……?」
その問いに対して、彼の興奮と戸惑いに葛藤して潤んだ瞳が印象的だった。
「気持ちよく、して、欲しいっす……」
途切れ途切れにかすれた声で言う彼に、俺はニヤリと笑ってズボンを下ろした。
そして、俺は、
「じゃあ、さっきみたいな下着履いて?まだ種類あるだろ?」
彼は、え?と一瞬戸惑ったが、もう興奮に負けたのか、いそいそとベッド下の収納ケースから新しいパンツに履き替えてくれた。
上はどこかのサッカーチームのユニフォームで、下はスポーツタイプのブリーフパンツ。
その眺めは最高だった。
「エッチだなぁ、明智君は」
そして、彼は俺の前に胡坐をかく。
俺も、俺が俺じゃなくなったような気がしていた。
ずっと押さえ込んでいた理性が爆発してしまったような、でも止められない。
俺は太ももあたりを舐めながら、パンツの硬いところを鼻と口で刺激する。
「うっ……やばっ……」
彼は吐息を漏らしながら、必死に声を我慢していた。
「気持ち、良い?」
聞くと彼は、無言でうなずいていた。
「あはは、素直で可愛いな」
俺は胡坐をかいたままの彼に跨るとお尻のあたりで硬くなったソレを刺激しながら両腕を肩にかけて向かい合う。
そして、彼の興奮で濡れた唇にキスをした。
「んんっ」
見ると明智君は目を瞑っている。
俺は舌を入れてさらに彼の口腔を、そしてお尻で股間を攻める。
「はっ、んん……やばいっす、めっちゃ、いい……」
時折息継ぎのタイミングでもらす彼の声はとてもエロく、俺のずっと臨戦状態の股間も我慢しすぎて濡れまくっていた。