続きです。
店長「んじゃアッシーよろしくぅ!」
上機嫌に若葉マークのついた軽自動車をポンポン叩きながら言う。
後輩「えぇ!こんなに人乗らないですよ!?それにアッシーとか古い・・・」
店長「うっせ!俺はこいつ(ガキ大将)と歩いて帰るから、
女の子も車ある子いるし、慧君と新人高校生2人乗っけてって!」
そう店長の指示に乗っかり、ガキ大将の子を除いて俺と2人の高校生を
送ってもらった。
「いやぁ、免許とったばかりなのに悪いねー」
俺がそんなに悪い気もせず後部座席から言う。
後輩「ほんとですよー!事故っても文句言わんでくださいね?笑」
こいつもそんなにまんざらでもない感じで返してくる。
「僕も入ったばかりなのにいきなり助手席座ってすみません(笑)」
あのジャニ顔の子がすこぶる呂律がまわっていない口で言い放つ。
後輩「ん!?もしかして君お酒飲んだの!?」
そう尋ねる。言われてみればこの車の中で俺しか
酒飲んでないはずなのに、かなり匂いが充満している・・・。
ジャニ顔「あ、ばれちゃいました?だって目の前にピッチャーがあったので(笑)
飲んだらジュースかと思って、いっぱい飲んだらこうなりました!」
(あははは・・・出来上がってらっしゃる・・・)
さっきまで無口だった子が、まぁ箍が外れたかのように喋る喋る。
俺と後輩はルームミラー越しに目が合い、溜息をついた。
「僕も飲んじゃいましたよ!」
突然喋りだしびっくりする俺。声の行方は俺の隣に座っていたもう一人の高校生。
まぁジャニ顔の子を見て想像はできたが、きっと高校生全員こっそり飲んでたんだろう。
「僕も結構飲んだんですけど、全然平気ですよー!」
いや、この子も負けず呂律が回っていない。気持ち悪くなってない様子なのが不幸中の幸いだった。
俺「最初全然コーラしか飲んでなかったから普通に油断してたよ!
大丈夫?気持ち悪くない?」
「え?全然大丈夫ですよー?むしろなんか心地良いですねぇ〜♪」
と言い終わると同時に俺にもたれかかって来た。
その瞬間心臓がドキッとしたが、酒の勢いと分かっていたため、冗談でその子の頭を撫でながら、
「ったく世話が焼ける新人ですねー!」
なんて言いながら、心ん中で
(最近の子はやっぱり遠慮がないな・・・まぁ別に気にならんけど)
とぼんやり考える。すると俺の頭ポンポンに反応してきた。
「あっ!それすごい気持ち良いです!もっとやってくださいー・・・」
と嬉しそうに言ってきた。その言葉に耳を疑ったが、俺も酔っていて意識がしっかりしていなかったため、
家に着くまでずっと撫でていた。
前の2人にバレるんじゃないかと思ったが、
2人は2人で仲良く話していた。
しばらくして、俺の横にいた子の家に着いた。
後輩「おーい新人君!家着いたよー!」
そう言うといきなりむくっと起き上がった。撫でてる間に寝ていたようだ。
「あ、寝てました!すみません!」
そう言って車から飛び出し、ふらふら家に向かう。
俺は心配になり、玄関前まで着いて行くことにした。
俺「ほんとに大丈夫?」
「すみません。ちょっと飲みすぎました・・・」
俺「ホントは飲んじゃいけないんだからな(笑)今度からこういう時の飲酒は絶対だめ!」
「えー・・・!そうですよね。調子に乗りすぎました・・・」
ちょっとシュンとなる姿に胸が鳴った。
俺「・・・まぁでも、バイト以外なら〜・・・」
とフォローしようとした時、こっちを見てニコッと笑いながら、
「まだ僕新人なのにすごい気使ってくれますね。ありがとうございます・・・
あと、さっき黙ってましたけど頭撫でてくれたの普通に気持ちよかったし心地よかったです♪」
その言葉に思考が止まった。
俺「えっ!・・・えっと・・・」
「冗談ですよ!(笑)あ、ここまでこればもう大丈夫です!本当にありがとうございました!」
顔が熱くなるのがお酒のせいなのかそうではないのか分からなくなっていた。
向こうにとっては何気無いコミニュケーションなんだろうが、
俺にとっては目が回るほどのセリフだった。
ふと、別れ際に名前を覚えてなかったことに気づくが、誤魔化しながら見送る。
俺「えっと名前忘れちゃったけどまたバイトでな〜!」
晃一「えー!?僕の名前は晃一ですよー!では慧さんまたバイトで〜!」
そういうと晃一は笑いながら家に入ってった。
そう、晃一とはここで初めてちゃんと会話をし、初めて晃一に恋をしたのだ。