辺り一帯は民家が点々とあるだけで街灯も少ない。不気味な雰囲気の道を歩きながら、俺は相手の顔を確認していなかったことが不安になってきた。
こんな田舎だし、若いだけのブサイクが来たらどうしようかと。まあそうなったらテキトーに手コキでもしてやってバイバイしようと、まあそんな失礼なことを考えていた。
公園は近くをながれる川に沿った広場のようなところで、そこにあるベンチつきの東屋で待っていてほしいということだった。
真っ暗な川から聞こえる水音に耳をすませていると、指定された時間ぴったりになるくらいで、遠くから歩いてくる人影が目に映った。俺は目をこらして、その姿を観察する。
暗い中で、金色に近い明るめの髪が目立っている。服装は白いノースリーブのシャツにハーフパンツと、かなりラフめな感じだ。
田舎ヤンキーかな、と思っていると、相手はまっすぐにこっちへ向かってきて、俺の前に立った。
「KOさんすよね?」
そう聞かれたとき、俺はちょっと自分の目を疑った。
公園の明かりに照らされた髪はツイストがかかったセンターパートで、遠くから見えたとおり色はハイトーン。片耳にさりげなくシルバーのピアスがついている。パッと見、渋谷あたりにいそうな感じだ。
ちいさくキュッと締まった顔は、目鼻立ちがCGのゲームキャラのように綺麗に整っていて、ハーフのようなものすごいイケメンだった。
「そうです。シュンさんですね」
俺は相手がアプリで名乗っている名前を聞き返した(実際のアカウント名じゃなくてフェイクです)。田舎ではありえないような美形ぶりについ敬語になってしまう。
「はい。こんな夜中に悪いすね」
シュンは笑って返事をする。意外に低い声だったけど、まだ少年ぽさを残した声音だ。
体つきはプロフの通りシュッと細身で、肌は天然の小麦色という感じ。
ノースリーブから出ている腕は細いけど二の腕がはっきり出て引き締まっていて、運動しているのか足もけっこう筋肉質だ。脱いだらさぞスリ筋なんだろうなと想像される。
「いや、こっちも夜中にすいません」
「お兄さん、このあたりの人じゃないでしょ」
「なんでわかるの?」
「雰囲気でなんかわかるし。お兄さんみたいな感じのイケメンこの辺りにいないもん」
「えっ」
まあ俺もそれなりに見た目は気を使っているけど、超絶イケメンから思わずそう言われて、女子みたいな反応をしてしまう。
それが可笑しかったのか、シュンはアハっと笑った。
「かわいいすね。俺の家すぐ近くだけど来ません?」
「いいけど、家族とかいないの?」
「いないよ。いま俺しかいないから」
そう言って、シュン俺を連れて歩き出した。
(続く)