リビングで3人でTVをみている。
隼は布団や洗濯、洗い物や明日の朝の下拵えなどのため何度か場を離れた。
翔がモジモジして私の方を見ては俯いたりと忙しない。
隼が4度目に立ち上がった際、翔と目が合った。
ドキッとした表情の翔…
『さっきから何?どうしたの?』
翔「えっと…お話しておかないといけない事があって…。
でも…話したら怒られるし、ここには居られなくなるから…。」
『は?何の話?話し難くても、それだけ葛藤しているなら話して楽になりな。』
TVからお笑い芸人のネタが流れて来るが、もはや雑音に過ぎなかった。
暫くの葛藤の後、私に向き正座をし、額を床にゴンッと当てながら
「すいません、僕、隼くんとエッチしました。」
唐突の話に言葉に詰まっていると、私の無言に耐えきれず、更に
「えっと…隼くんの童貞も処女も奪いました。
すいません。」
声が震えながらそう告白してくれた。
言葉に詰まっていると、隼がリビングに戻ってきた。
隼「翔、何?何してんの?どうしたの?」
翔「すいませんでした。」
土下座の姿勢を変える素振も見せない翔。
隼「えっと…どうしたんです?」
翔「僕は…勇人さんのことを知りながら、隼くんの処女の童貞を奪いました。すいませんでした。」
呆然とする私を見て、隼は翔の頭をバチンッと激しく叩きながら言った。
隼「今更何言ってんだよ、翔。そんな事もう勇人さんには俺から報告しているし、知ってるよ。」
翔「え?」
頭を上げながら私の顔を見つめる。
私は無言のまま大きく頷いた。
翔は肩の力が抜けると共に、両の目尻からツーっと涙が唾たった。
寸暇の後…
翔「え?なんで…」
隼「勇人さんに内緒にする事なんか、俺にはない。
翔と一緒にここに来た日の夜に、全部伝えているよ。」
翔「…」
隼「翔の事も全て、あの夜の事も全て。」
翔「……そう…、なんだ………。」
考え込む翔。
空気に耐えられなくなった隼が言葉を発そうとしていたので、口元に人差し指を立て、手振で静止を促した。
前のめりになりつつあった隼はゆっくりとお尻をついて座り直した。
翔「でも、あの日からも勇人さんは僕に話しかけたり構ってくれたりしていましたよね。」
『勿論。俺は翔に心を開いて貰いたかったからね。
でもそれは、無理やりではなく、何かの切掛けっで翔自身が開いてくれないといけないからね。
だから俺はその時を待ち続けていたんだよ。』
翔が隼の顔を見つめると、隼は笑顔で頷いた。
『でもまぁ…翔が心を開く切っ掛けをエロに頼る位じゃ、俺もまだまだ修行が足らないな?』
隼は「えー?」と言いながら笑い飛ばしている。
翔「そんな最初から、僕は受け入れられていたんですね。知らなかったとは言え、すいませんでした。
僕は浅慮浅薄でした。」
私がそんな事ない…と遠慮していると…
隼「えっと…センリョ…センパク?何それ?船?」
と、隼らしからぬ口調に『自分で調べろ』と少し冷たくあしらうと、翔は泣き顔から笑顔へと変わる事ができていた。