それから、一緒に暮らし始めてから1ヵ月が過ぎた。ケイタ君はこの家に住民票を移して、保険証とマイナンバーカードを手に入れた。そして、ケイタくんの名義の銀行口座も作った。
今までどうやって生活してきたのか?というくらいにケイタくんは知らない事が多すぎた。
バイトも今まで落ちまくってきたらしいけど…そりゃ申し込んでも身分証が無い、銀行口座も持ってないだと雇ってくれるとこは皆無だろう。
バイトも落とされる理由を誰も教えてあげないから、ケイタくん自身は自分がダメなんだと思い込んでいた。
身なりもしっかりとして欲しくて、ユニクロで服を買い込んだ。スーツも二着作ってあげた。1つはどこにでもあるスーツメーカーの吊るしのスーツ。もう一つはハンツマンの少し高いスーツだ。
鞄も靴も少し良い物を使ってもらって、持っていたバキバキのスマホもiPhoneに変えた。どっからどう見てもまともな大学生になった。
ここまでちゃんとしていれば、礼儀正しいケイタ君はすぐにバイトに合格した。バイトの面接に2つ応募して、2つともその日のうちに合格の連絡が来た。バイトの初出勤の日は家ですき焼きを作って食べた。
ケイタ君はとても嬉しそうだった。サポで会ってた時のケイタ君はもういなかった。体重も57kgまで増えて、健康的でショートが似合うイケメン大学生のようだった。
体づくりのためと、毎日皇居までランニングして皇居ランをして帰ってくるケイタくんはキラキラしていた。よく食べて、よく笑ってくれるケイタくん。僕はケイタくんを見てるだけで幸せだった。
この1ヵ月の間に僕はケイタくんに一切手を出さなかった。
ムラムラした時はあったけど、ぐっと堪えた。僕自身が思ったことだから、ケイタくんに自分の体を売って生活して欲しくないと僕自身が強く思って彼をここに住まわせたのに…僕がケイタくんに手を出したら、それはケイタくんがサポで生活してるのと一緒だから。
だから、ケイタくんとは今後も絶対に何もしないでおこうと心の中で誓っていた。