『今日は大晦日。準備を一通りしたら昼寝をして夜に備えるよ。』
朝御飯を食べながら2人に話すと
「わかりました。」
と快活な返事がハモっていた。
神殿の中は全般的に私が準備する。
本殿には立ち入らせることはできないし、拝殿もいざという時に全てを把握しておくためにも手を出させたくないからだ。
隼には竈や母屋での準備を、翔には御社殿全体を掃き清めてもらった。
「おはようございます。」
吉川さんと一緒に葵ちゃんがやって来た。
『おはようございます。今年ももう終わりですね。』
吉川さん「そうですね。でも今からが忙しいですからね。」
『はい。』
苦笑いをしながら答える。
『今年もよろしくね?葵ちゃん』
葵「はい。よろしくお願いします。つきましては服を預かりたいのですが…。」
『準備しています。よろしくお願いね。』
葵「はい。」
透き通る笑顔が突き刺さる。
「かわいい…」
母屋の入口に佇む隼の口から溢れ落ちた。
目が合った葵ちゃんは恥ずかしそうに服で顔を覆いながら境内を下って行った。
翔「今のは誰なんですか?」
怪訝に質問された。
『今のは吉川さんのお孫さんで葵ちゃん。
正月休みで帰省するから、中学生の時から毎年巫女のアルバイトをしてくれているんだよ。」
隼「え?マジですか?やったー。」
飛び跳ねて喜ぶ隼。
そしてその姿に驚く翔。
『葵ちゃんと隼はね、ちょっとだけいい感じなんだよ。』
と、翔に告げると…
隼「いや、まだそんなんじゃないし…」
と言いながら顔を少し赤らめた。
翔「え?隼くんは勇人さんと関係を持ってて…
この間、僕と関係を持って…
その上、好きな女の子もいるの…?」
『隼は恋多き漢だからね。
ってか、翔も色んな恋をしないといけないよ?
思春期なんだから、翔も異性に興味を持って良いんだよ?』
「信じられん、色に溺れてる。」
考えられない…と言った素振りで話す翔を見て、色に溺れるか…そんな風には考えたことがなかった…と思った。