井上「コーヒー淹れ直してあげる。」
俺「ありがとうございます。」
俺はバスローブの紐を結び直してコーヒーをいただく。
井上さんが淹れてくれたコーヒーをすすりながら、プレミアムロールケーキを食べる。
甘いクリームとあたたかいコーヒーが俺をほっとさせてくれた。
神崎「稜くん、描きがいあるよ。ポーズもかなり上手だし。」
そりゃぁ、プロのバレエダンサーだし、一般の人よりは上手だろうな、とは思ったけど、そんなおだてられてる感ある言葉で褒められて悪い気はしなくて。
休憩中は井上さんが仕事の話をした。
どうして写真を撮るのか。しかも主にバレエをはじめとした舞台写真。
目や心に焼きつく動き、シーン、感情があるのが生物の舞台の醍醐味だけれど、逆に写真から思い出すその舞台の雰囲気がある事に気づいてしまい、そこからいかに躍動感のある「写真」という動きの中の一瞬を切り取ったものを撮れるかということの虜になったんだとか。
そんなのが10分で足りるわけないのでかなりさらっと話してくれたけど。
そのあと井上さんはパソコンで撮った写真を確認しはじめた。
いらない写真を消したりしているのか、真剣な表情だったけど、一瞬、ほんの少しニヤけた様にも見えた。
神崎「今までの2枚はウォーミングアップで、ここからが本番って感じだけど、やってみて大丈夫そう?」
俺「たぶん大丈夫だと思います。途中でちょっとずつ動いて最初にとってたポジションと違うって気づいたら直してるんですけど、それで良いのかな?」
神崎「人間だからポーズとってたって動いてしまうのは仕方ないし、機械みたいに固まっててもぎこちなくなるだけだから、基本動かないように気をつけててくれればあとはそんなに気にしなくても良いよ。息遣いとか、人間の体温とか、そういうのも絵の雰囲気に入れられたらって思って描いてるし。」
俺「わかりました。」
神崎「井上さん、はじめても良い?」
井上「あと1分。」パソコンをいじりながら返事をする。
俺「じゃぁトイレに行ってきます。」
バスルームで下着を下ろし、用を足した。
こんな薄い生地でシミになったらすごく恥ずかしいのでよく振り絞り、しかもモノを洗い、バスタオルで念入りに拭いてから穿き直した。
こんな卑猥な下着、なに律儀に穿き直してるんだろう。
と思いながらバスローブを羽織って部屋に戻った。