今から15年前の話になるので、少しずつ思い出しながら書いていこうと思う。
俺は耕介。当時高校2年生で、進級と同時に初めて携帯電話を買ってもらった。親が厳しかったからそれまでは持たせて貰えなかったけど、春から通う塾の送り迎えで、何かと連絡が必要になるからって買ってもらったんだ。
たぶんもうその頃には男が好きだったと思う。
田舎町だしそういうことを話せるやつもいなかったから、悩みと言うほどでもないけど、誰かに話を聞いてもらいたかったし、情報も欲しかった。
自宅にはパソコンもあってインターネットも出来たけど、家族が共有で使うやつなので一番興味のあることは調べられなかった。
そういうタイミングで与えられた自分専用の携帯。もちろんインターネットもできる。今はもう終了したiモードてやつだ。
色々検索して、最終的にたどり着いたのが、匿名のメールでやり取りができる、全国規模の出会い掲示板だった。
今暇掲示板とか、画像掲示板とかに投稿するのはまだ怖かったので、真面目系掲示板にメル友募集として投稿した。たぶんこんな感じかな。
「最近男の人に興味があります。でも、まだ自分でもよく分からない部分があるので、色々教えてくれたり、悩みを相談できるような人がいればと思って投稿しました。会ったりするのは今は考えていないのでメル友みたいな関係で良ければ、よろしくお願いします。」
数人からメールが来たけど、その中で続いたのが、健太って奴だった。
実は最初の頃はお互い歳を偽ってて、あとから同い年だっていうことがわかった。
「おはよう」から始まって「おやすみ」まで、毎日健太とメールした。健太もすぐに返事をくれた。顔も知らないし、同じ県ていうだけで、どこに住んでるかも知らない奴なのによくあんなにメールが続いたなあと今になって思う。でも逆にそういう関係だから続いたのかもしれない。
当然普段は絶対話せないエッチな内容も話した。
「耕介て、もう男とやった?」
「やってない。健太は?」
「まだ。僕包茎だから見られるの恥ずかしいし。」
「実は俺も包茎(笑)」
「そうなんだ。僕包茎の方が好きだよ。」
みたいに、学校の友達には話せない内容も健太になら話せた。もちろん普通の話もしたけどね。
「今日、球技大会だったよ。」
「ほんとに? 僕のとこも球技大会だったよ。ソフトボール。テニスだったら良かったのに(笑) そういえば耕介、野球してたんでしょ?」
「マジ?俺の学校もソフトボールだった。野球やってたけど中学までだからもう腕鈍ったし。おまけにデットボール顔面に貰って最悪だったわー。健太はテニス部だったな?残念、来年に期待するんだな(笑)」
「健太おはよー!昨日は寝落ちか?慣れないソフトボールで疲れたんだろ?笑」
「健太?どうした?」
それから数日、健太からメールの返信は無かった。初めて出来たメル友、しかも同い年の気の合う、少し気になり始めてた相手だったから、食事も喉が通らなくなるほど落ち込んだ。
ー続くー