健太から連絡が途絶えて、一ヶ月が経った。もうすぐ夏休みも始まる。新しい出会いを求める気にもならないし、そろそろ受験勉強も本気で始めなければならない。「所詮、掲示板での出会いなんてこんなもの。」と自分に言い聞かせながら、なんとか日々を過ごしていた。
そんなある日、久しぶりに携帯から、モンゴル800の「小さな恋のうた」が流れた。 健太専用の着メロ。
「耕介、ずっと返事してなくてごめんね。実はもう耕介と連絡取るつもりはなくて、メールもアドレスも消そうと思ったんだ・・・。でもやっぱりできなかった。 怒ってるよね?本当にごめんなさい」
「うん。すげー怒ってた。嫌われたのかと思ったし、健太に何かあったのかと思って心配もした。でもまたこうしてメールが届いて、そんな気持ち全部吹っ飛んでった。 なあ、またメール続けれらるのか?」
「僕も続けたいと思ったからまたメール送ったんだよ。でも・・・」
「でも?なに?」
「前のメール覚えてる?球技大会の話。」
「俺が、顔面にボール受けたってやつ?それがどうかしたのか?」
「勘違いだったらごめん。耕介って、”広瀬耕介”」
(え?なんで知ってる。そいえば健太も同じ日に球技大会で、ソフトボールで・・・)
「もしかして、健太って○○高? 同じ学校?」
「やっぱりそうだったんだね。実は僕、耕介の試合見てたんだ。ボールが当たったときも。それでね、もしかしてと思って、今までのメールを見返してたら、広瀬耕介かもって思ったんだ。」
「でもそれってすごいよ。こんなことってあるんだ。 それで、健太は誰なんだ?」
「・・・。E組の佐山健太。 英語科だから、普通科の耕介は知らないと思うよ。」
「でもなんでメール止めようと思ったんだ? 俺だってわかって幻滅した?」
「全然違う! むしろ逆だよ。耕介って女子からも人気あるし、目立ってるし。でも自分は地味だし絶対合わないと思って。だから耕介に知られたくなくて・・・。ごめん。」
「顔も知らない相手とこんなに楽しくメールしてたんだ。そんなこと気にしない。 なあ健太、もしよかったら明日一緒に帰らないか?」
「ありがとう。 ・・・。うん。 じゃあ明日放課後連絡するね」
ー続くー