俺の正面に座った斎藤くんの浴衣の隙間から、パンツがチラチラ見える。
適当に返事しながら、気づかれないようにチラ見してしまう。
すると『なぁ、俺の話ちゃんと聞いてる?』
「えっ、なに言ってんだよ、ちゃんと聞いてるよ、んで続きは?」
『岡田くんってさぁ、彼女は?』
ほ〜ら早速聞いてきたよ。
斎藤くんにとっては極普通の話題かもしれないが、
ゲイの俺には、ズバリ聞かれたくない話だ。
メンドくせーな、と思いながらも答えなきゃ。
「いないよ、今はいらない!暫くは仕事の方が大事!」
『マジ?俺もいないんだよ。』
すかさず俺は
「彼女いたの?」と、余計な事を聞いてしまった。
『色々あって別れちゃった。岡田くんは?』
「俺?俺も同じだよ。でも斎藤くんてさ、すんげーモテそう。
次、すぐできると思う。」と、話を切り替えた。
『アハハ、なにいうんだよ、んなことないって。モテないよ。
でも女ってさ、付き合うと色々とメンドくさいよな?』
「えっ?メンドくせーって、どんな事で?」
『だって、岡田君だって付き合ったことあるんだろ?』
「うぅん、そうだよなぁ〜。」
なんか高校生の頃に戻ったような、そんな錯覚さえ覚えてしまう。
斎藤くんって、どうしても気になってしまう。
こうして親睦会も無事(?)終わった。
すると斎藤くんが、帰りのバスの中で、
『あのさ、家も近くだし今度待ち合わせしない?』
「えっ、待ち合わせ?いいけど、でも今度っていつ?」
『これから自由な時間なくなっちゃうので、ちょっと家に帰るから連絡するよ。』
「分かった。じゃー待ってるよ。」
斎藤くんからの思いもよらない提案に心躍ったが、
連絡するって、いつになるかも分かんないし期待しないで待つことにしたが、
5日後にちゃんと連絡がきた。
店へ着くと、斎藤くんは白い歯をみせ、『おぅ』と片手をあげた。
「久しぶり。」と、俺。でも一週間って久しぶりじゃないし・・・
でも惚れてしまったせいで、心臓の鼓動がうるさい。
ちょっと大きめのショルダーバッグがあったので、
「えっ今、帰る途中?」
『うん、そうだよ。』
「じゃー今日じゃなくてもよかったのに。」と言うと
『うん、でもなんか話をしたくなっちゃったから。予定あった?』
「大丈夫。あってもキャンセルするから。笑」
斎藤くんも笑いながら、
『アリガトな、でもほんとは予定なかった、んでしょ、どう?』
と、悪戯っぽい目を向けた。
あ〜ぁ、この目が完全にヤバイんだよな。
誰だってこんな顔されたら悪い気はしないよ。
イケメンで話しやすくて、どこかワルっぽさも垣間見える。
絶対にモテるはずだ。
親睦会でも女子から声がかかって、一緒にスマホ撮ってたし。
でもプライベートの時間は誰よりも多く一緒に過ごしてやるぞ。
今日は斎藤くんの事をもっと良く知ることができるはずだ。
近くの居酒屋へ。
もう何か月も会ってないかのように話が弾んだ。
弾んだといっても、親睦会で気になった子いた?とかそんな事ばっかり。
なんだよ、女ってメンドくせーって言ってた人はどこの誰だよ?
やっぱりノンケって、所詮興味は女だけなのか? ちょっと不満を感じる。
でも、お互いに心地いい時間を過ごすことができた。
このまま、(またな。)って、別れちゃうんだろうか?
絶対にこのまま別れたくない。どんな口実で誘えんばいいのか、考えてた。
でもこの辺は詳しくない。
どんな店に誘えばいいのか分からなかった。
でもラッキーなことに雨だった。
そうだ雨のせいにして、なんとかならないか?そんなことを考えてると、
斎藤くんが『なぁ、濡れちゃうから俺んちへ泊まれば、どうする?』
えぇっ、マジ??
願ってもない誘いの言葉だ。拒否する選択肢なんかなんにもない。
「いいの?」
『うん良いよ。ちょっと待って、あそこのコンビニで傘買ってくるから。』
俺は遠慮気味に、斎藤くんにくっつかずに雨の中歩いた。
『濡れちゃうから、もっと肩くっつけなよ。』心配げに言ってくれた。
「えっ?でも斎藤くんだって濡れちゃうよ?それにバッグだってあるし。」
『じゃー、岡田君が傘さしてくれる?』
俺は右側を歩いていたので、思い切って右手で傘を持って前にさしだし、
左手で斎藤くんの左肩に触れるような密着した状態で歩いた。
でも、、これからどうなっちゃうの?
俺とセックスでもするつもり?
イヤイヤ、ノンケならそんな事考えてないよな?
でも、、女ってメンドーくせーって、言ってたし。
一体、どっちなんだよ?【期待しちゃうよ。】斎藤くん。
色んな感情が頭ん中を交錯する。
小さなビニール傘に肩をくっつけながら、雨の夜道を歩いた。