耳元で好きって囁かれるのゾクゾクする。
不思議だなぁ、ただの言葉なのに。
こんなに気持ちよくて最高の時間を過ごしていて、俺も好きって返したい気持ちだった。
でも言えない。
言っちゃいけないって思った。
好きだけど何というかちょっと違う。
T:好きだよ、好き、大好き。
俺:うん…うん……
うんって何だよ…
最低じゃん…
でもTは俺にも同じ事を言えと求めるような事はしない。
本当に優しい奴だと思う。
こんな事口にするのも最低だけど、俺はTの身体に、TとのSEXにメロメロになってるんだ。
Tの言う好きとは多分違う。
どうしても別の人がちらつく。
ある時聞いた話。
一応噂話らしいけど、ほぼ黒で真実だろうと。
Kくんと同じ中学だった吹奏楽部の女友達から聞いた話。
Kくんの仲の良いグループに1人いじられキャラの男の子がいたらしい。
決していじめられてるわけじゃないとは言っていた。
そりゃそうだ、Kくんがいじめなんてするわけがない、絶対にありえない。
だから恐らくいじるのを主導してた人間は別にいたんだろう。
内容を聞くとなかなか危ない話だった。
どうやら服を脱がせたりしてたという。
そしてなぜかKくんはそういう時だけやたら積極的になっていたと。
と言うのも、偶然見かけたらしい。
ある日体育館のステージ裏の暗がりでそのグループがいじられキャラの男の子を囲っていた。
その子は紛れもなく全裸でいてみんなでその子の身体をいじくり回してたと。
その男の子のチンコを揉んだりさすったりして勃起させようとしてたとかしてないとか。
Kくんも触ってたとはっきり言ってた。
Kくんは普段女の子と会話する事もないし、彼女の噂も全く聞かない事から、男の子が好きなのかなと思ったらしい。
Tと体の関係を持つようになってから、余計その事について考えてしまうようになった。
Kくんももしかしたら男に興味があるのかなって…
もしそうならちょっと嬉しいなとも思った。
でもKくんに普段そんな素振りは全くない。
そうでなくても俺とTがSEXしてるなんて知られて良い理由なんて一つもない!
それでも考えてしまう…
Kくんとそういう事したいって…
キスしたい、触れたい、触れてほしい…
だから俺はTに好きなんて言えないんだ。
でもTの事は好きだ。
気持ちいいSEXしてるからじゃない、それだけじゃなくて、俺の事を真っ直ぐに見つめてくれる。
そんな人今までいなかった。
俺の気持ちいいところに触れるTの大きな手も優しい声も大好きだ。
でも多分俺はKくんの事も好きなんだ。
中3の頃に初めて見かけて、確実に気になっていたKくん。
恋愛感情なんかじゃないと思ってたけど、今のこのモヤモヤも一目惚れしたんだって結論づけると全て納得がいく気がする。
それでもTとの関係をやめられる気がしない…
これ以上ないくらい俺の身体はTを求めてる。
だからこそ絶対Tとの関係をKくんに知られるわけにはいかないし、Kくんへの感情をTに知られるわけにもいかない。
罪悪感に押しつぶされそうになりながらも、俺は自分で求めてTに抱かれたんだ。