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さよならの向こう側には…【涙の受験編、中編】21〜24
 長編編集部φ(..)  - 07/6/28(木) 16:29 -
俺「ジンに認められて良かったね」
ジンと図書館で別れ、教室に戻りながらヒカルと話していた。
光「言った通りだろ。やっぱり話して正解だったよな」
突然ジンに話す事になった時はどうなるかと思ったが、やっぱりジンの人間性を考えればこういう結果が当然だったのかもしれない。俺には分からなかったが、長くつきあってるヒカルにはジンの気持ちがある程度読めていたっていう事だろうか。
光「ジンが見せろって言ってたけど、ジンの前でしてみるか?」
俺「絶対イヤだ」
光「人に見られると興奮しないか?」
俺「しないよ。ヒカルいつからMになったの?」
光「俺はシュウとなら別に誰に見られたって構わないさ」
俺「なに言ってるんだか…」
ヒカルはただ笑っているだけだった。まさか本気でジンの前でやるとは思っていないだろうけど…。
俺「まぁジンに理解してもらったし、少しだけ気を使わずに済むかもね。これからいっぱい楽しまなくちゃね。だってさぁ、俺達には…」
光「時間がないから!だな。じゃ今からやるか?」
俺「ダメ〜!ちゃんと授業出なきゃ」
そう言ってヒカルのクラスの前で別れた。

2月も終わりが近づいた週末、宿題が沢山あるからという事でカズヤの家に集まる事に決まった。
金曜日の朝登校してみると、まだ疎らな教室でカズヤが本を読んでいる姿が見えた。
最近元気がない様子だし、コウ達も同じ事を話していたので声をかけてみる事にする。
俺「カズヤ、何してるの?」
聞こえてるはずなのに無視だ。
俺「カズヤ!」
和「ん?あーおはよう」
俺「大丈夫?なんか元気なさげだけど?」
和「あ、あぁ平気だよ」
あまり冴えない顔だ。
和「そう言えば明日ウチにくるだろ?」
俺「うん。みんな来るの?」
和「コウは来れないらしいよ。ユタカは来るみたい」
今回はユタカか。まぁ誰かいればまだ安心できる。
和「ところでさぁ、明日親がいないんだ。泊まれる?」
いきなり言われて思い出した。前にそんな約束をしてたはずだ。
俺「どうかな。急だから無理かも」
和「なんだ、約束が守れない奴なのかよ」
そう言われると行かないとは言えない。しかもいつもと違い寂しそうな顔を見れば尚更だ。
俺「分かった。なんとかするよ」
一抹の不安を抱えながらもOKした。


豊「おはよーさん!」
カズヤとの会話に行き詰まりを感じていたが、良いタイミングでユタカが加わった。
それを聞いたカズヤは挨拶を返してすぐに教室を出ていった。トイレにでも行ったのだろうか。
それを見送るように目で追っていたが、視界から消えたところでユタカに話しかけてみる。
俺「なんかカズヤ元気ないみたいだね」
豊「何日か前からだな」
俺「普通この時間は部活の朝練じゃない?」
豊「そうだよな。その部活で何かあったみたいだぜ」
俺「何かって?」
豊「俺も詳しくは知らないけど、コウがそう言ってた」
一瞬俺とヒカルの事で落ち込んでるかと思っていたが、部活の事と聞いて少しホッとする。それとともにカズヤなら部活の事で悩むのは充分理解できる話でもあると思った。
俺「ところでユタカは明日カズヤの家に行くんでしょ?」
豊「ああ、行くよ。あんなにいっぱい宿題出されちゃ手分けしてやるしかないよな」
俺「うん。コウは来ないの?」
豊「後から来るかも知れないって言ってたけど、どうだろな」
俺「ユタカは明日カズヤの家に泊まる予定?」
豊「そりゃないよ。俺ン家近いし必ず帰るから。それにカズヤの家にはまだ泊まった事ないんだよ。泊まりたいって言ってもカズヤがいつもダメだっていうからさ。たぶん誰も泊まった事ないはずだよ」
俺には『どうしても泊まっていけ』といつも言うけど、他の人には話が違う事に少しだけ驚いた。
豊「シュウは泊まりたいの?」
俺「あっ、いや、そういうわけじゃないけど…俺は家が遠いから遅くなると帰れないかなって思って」
ユタカが泊まりではない事と、俺だけがカズヤから言われている事を考え、なんとなく言葉を濁した。
豊「明日って天気予報が雪予想らしいから、マジに帰れなくなるかもよ?まぁ早めに終わらせれば大丈夫か」
俺「そっか。じゃ頑張らないとね」
ちょうどコウが駆け込んできた。
弘「おすっ!遅刻するかと思ったよ」
豊「おぅ。おまえ明日宿題しに来ないの?」
弘「あーどうだろ。たぶん無理かなぁ。ダメなら日曜に1人で頑張るよ。シュウは行くのか?」
俺「うん。その予定だよ」
向き合うコウの目が俺を探ってるように感じられ、なんとなく目を反らしてしまう。
チャイムが鳴り始めたので会話もそこで終わった。
カズヤも戻ってきたようだ。相変わらず歩く姿が元気なく見える。
俺『部活の事でっていうなら明日少し励ましてやらないと…』
そう思いながらカズヤの背中を見ていた。


母「今日は雪が降るっていうし止めた方がいいんじゃないの?」
今日この言葉を聞いたのは何回目になるだろうか。
たしかに心配なのは当たり前だ。降った雪がなかなか解けずに道路が塞がってしまうと、一日家に帰って来れないなんて事になり兼ねないからだ。
俺「今日は泊まりだし大丈夫だよ。明日早めに帰ってくるから。ちゃんと連絡するよ」
そう言って家を出た。
いつも通りバスに乗ってカズヤの家に向かう。
バスの中から外を眺めてみるが、ドンヨリ曇って今日は富士山も全く見えない。予報は夜からって事だが、今にも降り出してきそうな感じだ。予報もハズレてくれれば良いと思うけど、どちらかと言うと悪い方にハズレそうな雲行きに見える。
それにしてもまるでカズヤの気持ちを表しているような天気。それだけじゃない、今後カズヤとどういうことになっていくのか、正に先が見えないという雰囲気だ。

バスの中でしばらくカズヤの事を考える。
実は、どうしても落ち込んでいる理由を知りたかったので、昨日寝る前にコウにメールをして聞いてみたのだ。
コウの話では、ラグビー部内で以前からカズヤの練習方針に不満が上がっていて、それがつい最近になって大きくなり、チームが肯定派と否定派の2つに分裂してしまったという事だ。
部活になると熱血漢となるカズヤの事だから、よっぽどキツい練習だったのだろうか。
そんな事態なら、人一倍責任感の強いカズヤの事だから、あれだけ悩むのも無理のないところかもしれない。
『そうとなれば今日は慰めてやらなければ』
流れる景色を見ながらそう考えていた。

予定通りの時間にバスを降りた。3度目ともなれば考え事をしていてもカズヤの家までは辿り着ける。
誰もいないと聞いていたが、一応玄関で大声で挨拶をしてみる。やっぱり返事はない。仕方なく黙って上がり込んだ。
『あの時コウもきっとこんな感じで部屋まで向かってたんだろうな。その後あんな場面に遭遇して、かなりびっくりしたに違いない。今日はまさか何もしてないだろな…』
そんな事を考えながらカズヤの部屋まで来てドアの前に立った。


俺「カズヤ!入るよ」
そう言ってドアを開けた。俺とカズヤのような事はないだろうと思ったが、何が起こるか分からないから慎重を期してゆっくりとドアを開ける。
ところが入ろうとして、2人の姿を見た瞬間、その場で固まってしまった。カズヤとユタカが顔を擦り寄せるようにして何かをしていたからだ。
俺「!」
立ち竦んでいた俺に、2人同時に顔を上げた。
和「何突っ立ってんの?」
そう言われてコタツの上を見ると、英和辞典が広げられている。
俺『そっか、2人で辞書を覗いてたんだ…びっくりした』
なぜかホッとため息をつく。
人間の先入観とは怖いものだ。日頃の何げない行動でも、違う事をしている様に見えてしまう。逆に端から見ればおかしく見える事でも、平気で出来てしまう事もある。
キョトンとしている2人を尻目に、苦笑しながらコタツに入った。
俺も加わり、そこから3人で宿題を黙々とこなし、集中して一気に仕上げていく。
頑張ったおかげで意外に早く終わった。4時間くらいだろうか。時計をみるとまだ夕方6時くらいだ。
豊「疲れたなぁ。でも終わって安心したよ。それにしても数学って宿題出しすぎ」
思わず伸びをしながら話す。
俺「なんだろね。嫌がらせとしか思えないよ」
カズヤがドリンクを持って戻ってきた。みんなで飲みながら話す。
豊「俺らの担任だろ?身内に厳しすぎない?」
和「まったくだな。まぁ終わってなによりだよ。とりあえずは明日の休みをゆっくりと堪能できるよな」
豊「あれっ、めずらしく明日は部活ないわけ?」
さり気なく出たユタカの言葉ではあったが、部活の話には持っていって欲しくなかった。
カズヤはドリンクを口にしていたのですぐに答えないが、どう説明するのか気になってしまう。
和「明日は休みにした」
ただそう言っただけだった。
なぜ休みになったのか理由がない。練習をしたくてもできない状況なのか、それとも別に相応の理由があるのか。
ユタカもマズかった事に気づいたのか黙ってしまった。気まずい雰囲気が流れる。
豊「俺そろそろ帰るわ」
耐えられなかったのか、立ち上がり帰り支度を始めた。

引用なし

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