ぎゅっと手をつかまれた。少し痛いくらいだ。
小雨が降っている。天気予報は晴れだったはずなのに。
無口なサチトはただ何も言わず僕の手をひっぱって歩いている。目がなんか本気だ。少し髪が濡れてきて、前髪から落ちる雫に男らしさを感じてしまった。『サチトどうしたんだ?どこへ行くんだろう。なんか怒ってんのかな。』色んなことが頭をよぎった。
「おいサチト!どうしたんだよ。授業はじまっちゃうよ。」
サチトはそれでも何も言わなかった。
連れて来られたのは、俺達バレー部の部室。ちょっと汗臭いが、マネージャーのユキが片付けてくれているおかげで、まぁ、座る場所くらいはある。俺達の青春の場所だ。