ふと、正気にもどった。
「何すんだよっ。」
俺はつき離した。
「ごめん…。」
サチトは少しのびた紙をかきむしりながら下をむいて言った。
「お前いかれてんじゃねぇの?」
俺は、サチトのことが好きだ。でもでた言葉はそんな言葉でしかなかった。
その時、サチトは涙を一筋流したんだ。外ではセミがうるさかったのを覚えてる。
「俺、ユキと付き合ってるけど、なんか違うんだ。」「何がだよ。」
「ひくなよ?…なんかユキとキスしてる時もエッチしてる時も他の事考えてる。」
「お前らそんなとこまでいってたんだぁ。やっぱエッチって気持ちいいの?」
「最後まで聞けよ。」
「あ、うん。」
「俺、おかしいかもしんないけど、おかしいかもしんないけど、お前の事考えてる。俺、お前が好きみたいなんだ…。」
沈黙が流れた。時も心臓も止まったみたいだった。動いていたのは、サチトの強く握られたこぶしくらいだったかも知れない。セミも鳴き声も聞こえなかった気がする。