『大丈夫か?亮(俺)…顔色悪いぞ?』
『え?…あぁ、大丈夫だよ。あはははは…』
俺は慌てて笑顔を作ると、焼き鳥の串を横に振った。
ぎこちない笑顔だったか…。
Tは納得する所か、更に心配の色を強くした。
『ホントか?酔ってきついならちゃんと言えな!』
そりゃ色んな意味できついよ。
ぶちまけられたらどんなに楽な事か…。
俺はTの肩を豪快に叩いて、今度は完璧だろう笑顔を作った。
『ホントだって!きつい時はきついって言うからさ!…よっしゃ!俺も参加するぜ!』
(何をうじうじやってんだ俺!)
酒の席の事だ。
勝てば良し、負けても明日になれば皆けろっと忘れているだろう。
楽しまなくてどうすんだ。
俺は残りの焼酎を一気すると、無言のTをそのままに、じゃんけんの体制に入る連中に加わった。
そして、1ラウンド2ラウンドと過ぎてゆき…。
最終ラウンド。
『まぁじか…』
運悪く残ってしまったのは、いつの間に参加したのか、先程俺を心配してくれたTと、俺だった。
(何てベタな)
もはや笑うしかない。
俺ははやしたてる連中に『勝つぜこの野郎』と叫ぶと、Tに拳をつきだした。
『死んでも負けねーかんな!』
『…。俺だって負けないよ』
『?』
心なしか、Tの表情が暗い様に思えた。
しかし。
(まぁ誰だってあんな提案は嫌だよな)
俺は特に深く考える事なく、さっさと勝負の言葉を口にした。
『いくぞ!…最初はグー!ジャンケン―――』