▼じゅんきさん:
>下手に話し掛ける勇気もなくて、俺はただコウスケの背中についていった。
>
>俺らは住宅地を過ぎて、川沿いを走っていた。
>電灯も点々としかなく、薄暗い。
>突然コウスケが土手を降りていき、空き地になっているところで止まった。
>そこは2,3こベンチがあるくらいで、真っ暗だ。
>俺はゆっくりとコウスケに近づいていった。
>コウスケが振り返り、俺を見ている。
>俺は目を合わさずに、横を向いて黙った。
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>「…俺、中2の時に初めてああいうDVD見たんや。女が裸になったやつ。友達とな」
>
>俺は黙ったままコウスケの話に耳を向けた。
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>「周りのやつらは興奮しとった。けど俺にはようわからんかった」
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>コウスケの言いたいことがなんとなくわかった。
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>「そんな感じで、高2になって転校してきて、ジュンキを見つけた。そんで俺…ようわからんのやけど……ええなぁって思うようになって…ジュンキを……つまりな、俺もジュンキも男やろ?おかしいのはわかっとるんやけど…」
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>コウスケが言葉に詰まって、それでも俺に伝えようとしてるのが伝わる。
>けど俺はコウスケを直視できない。
>
>「で、いろいろ試してみた。触ったり、いろいろや。じゅんき、案外嫌がらんから、もしかしたら思うて……でも確信がもてんくて、俺どうすればええんやろってずっと考えとった。でも俺アホやから、考えてもしゃあない思って……」
>
>「…ジュンキも、俺と一緒なんやろ?……だから、男が好き…て意味で……」
>
>コウスケの声が震えている。なんだかかわいそうに思えた。無理してるのがバレバレだ。
>俺はなんと言えばいい?
>はい、そうです。
>こう言ってしまえば楽になるんか?
>でもそう言ってしまえば、自分が『普通』じゃなくなる気がした。
>俺はこういう自分を今までずっと隠してきたわけで、それをこんな簡単にバラしていいのだろうか?
>俺はなんとも言えず黙ってしまった。
>コウスケのことは好きだが、いざとなると踏み切れない自分に情けなくなった。
>
>「なぁ、ジュンキ?」
>
>簡単なことじゃないかもしれない。コウスケだってこの言葉を言うまで悩んでただろう。
>コウスケの気持ちを無駄にしたくない。
>それに、ここで否定したら絶対後悔するだろう。
>俺はゆっくりとうなずいた。
>
>「…うん。俺もコウスケと……一緒だと思う」
>
>言った。言ってしまった。言えたんだ。
>
>「好きってことか?」
>
>コウスケは信じられないというように聞いてきた。
>
>「ああ、たぶん。よくわからんけど」
>
>俺は今だにコウスケを直視できず、横を向いたまま答えた。
>
>突然自分の頬に温かさを感じた。
>コウスケの手が俺をコウスケの顔に向けた。
>いつもよりキリッとした、優しげな表情だった。
>俺はたぶん無表情だと思う。
>コウスケは白い歯を見せて、俺にキスした。
>俺はそれを受け止めた。
>コウスケの吐息を間近で感じ、その息を俺は吸った。
>唇は思った以上に柔らかくて、熱かった。
>コウスケの腕が俺を包むのを感じた。
>しだいにそれは強くなった。
>俺も無意識にコウスケの背中に腕を回していた。
>コウスケが口を開けたから、俺もそうした。
>舌ってこんなに熱いのか。
>俺らは何度も舌を絡めた。
>無我夢中だった。
>
>コウスケの唇が離れ、密着も解かれた。
>
>コウスケが微笑んできた。
>
>ここで初めて恥ずかしさというものが俺の全身を走った。
>俺は顔が熱くなるのを感じでうつむいた。