リンゴ鍋は……鍋だった。
コウスケがあんなに頑張って擦ったにもかかわらず、リンゴは力を発揮することなく、鍋の味に負けてしまっていた(笑)つまり、ごく普通の鍋。
俺は安心して最後までたいらげることができた。
「美味かったな。普通に(笑)」
「え?ああ。リンゴが上手く隠し味になったってことやな」
コウスケは不満そうだ。もっと違う味を期待してたんだろう。
「隠れすぎな気もするけどな(笑)けど、マジで美味かった!コウスケって料理とかするんだ?」
「軽くな。ジュンキは逆にしなさすぎやろ(笑)白菜ズタズタやったぞ(笑)おし!もう1本いくか!」
コウスケはそう言うと、また新しく缶ビールを開けた。俺のと合わせてこれで4本目。
実際俺の分もほとんどコウスケが飲んでる。
「ジュンキ、注いで。お前ももっと飲めって!今日はおもいきり酔うぞ」
コウスケの弱々しくなった動きを見かねて、俺はコウスケのグラス満タンにビールを注いだ。
俺はもう飲まない。というか、中ハイなら飲んだことあるが、ビールというものには苦みしか感じられない。
コウスケはグビグビと飲み干していく。
こういうところが俺をガキっぽくしてるのだろうか?
俺はなにかとコウスケに頼っている気がした。
……2時間後。時刻は夜11時を回っていた。
コウスケはトランクス1枚になっていた(笑)目はトロンとして、顔が赤い。
全身赤かった。綺麗に割れた腹筋も、膨らみをもった胸筋も、発達した肩も腕も。
俺はついつい見惚れてしまう。
「暑くないか〜?ジュンキ〜……」
コウスケはそう言いながら、俺の頬を触ろうとしてきた。でもいつもより動きが鈍い。
俺はその手をかわして言った。
「お前が飲みすぎなんだよ。おい、どこ行く気?」
コウスケはフラフラと立ち上がった。
「小便……おっと…」
よろけそうなコウスケをほっとけず、俺は立ち上がり、コウスケの隣についた。そしてコウスケに肩を貸す。コウスケの体重がグッとかかった。
「ほんと大丈夫かよ?小便までは手伝わんぞ」
「ん〜?ちゃうわ、もう寝る」
バカになったコウスケは向きを変えて、自分の部屋に行こうとする。
「は?寝るって、小便はええんか?それに、風呂入らんの?」
「おん、ジュンキと寝る」
コウスケは俺の話を聞いていない。俺はしかたなくコウスケの部屋にバカになったコウスケを支えて連れていった。
ようやくベットの前までたどりついた。ベットは1つしかない。
「おし、着いた。コウスケ?俺はどこで寝ればいんだよ?」
俺に完全にもたれかかったバカになったコウスケに聞いた。
「俺らええ夫婦になれそうやな」
バカになったコウスケが微笑んで俺に言った。
「そうだな。で、俺はどこで……うわっ!?」
バカになったコウスケはそのままベットに倒れ込み、それが俺まで倒した。
気付くと、俺の上にコウスケが乗っかっている。
「ジュンキ〜寝るぞ〜」
「お、おい!バカ!重いって!お前ほんと酔いすぎだから!」
俺はバカをどかそうとしたが、体格差でもたついているうちに、バカにおもいきり抱きしめられて、身動きがとれなかった。
コウスケの酒臭い息と、体重と、綺麗に発達した肉体を感じて、俺はなにもできなかった。