「ごめん…コウスケ…」
一心にコウスケを見つめて、俺は言う。
「俺…わかったんだ……コウスケがいなくなって、何も手につかなくて…コウスケのことしか考えてなかった…」
俺は必死に訴えるが、コウスケは目を合わせてくれない。
「俺さぁ…後悔しか残ってなくて……俺の変なプライドのせいで、コウスケの気持ちに全然応えれてなかったんだなって…もっと素直になれてたら、もっと変わってたんだろうなって…」
俺の声にだんだん力が込もっていく。うつむいているコウスケに俺はただ必死に言った。
「…俺…会いたかった……会って、どうしてもコウスケに謝りたい……だから、その…コウスケがこの大学行くって聞いて…そのために俺……会いにきた…」
言いたいことがありすぎて、上手く言えない。
1年前には言えなかったこととか、素直に言わないと…今言わないと
「なぁ…コウスケ……俺、前みたいにコウスケと……走れないか?」
これを言うためにここに来たんだ
コウスケと一緒に走りたい
もっといろいろ言いたいし、聞きたい
もう失いたくない
俺は必死に言った。
それでもコウスケはずっと黙っている。
何か言ってくれよ…
俺はさらに力を込めて言おうとした。
「なぁ…コウスケ…また一緒に俺と走っ…」
「遅いんや……」
うつむいたままコウスケが言った。
「全部遅いんや……ジュンキは…遅すぎる……今さらもう遅いわ……」
力ない声で、コウスケは言い放った。
遅いって、もう無理ってことか?
もう一緒に走れないのか?
「なんで?……こうやって会えただろ?ならまた一緒に走れるじゃん…遅いって…なんでだよ?」
「ジュンキが変わったように…俺だって変わったんや…俺は前みたいに、ジュンキの気持ちに…応えてやれん……」
正直俺は、俺が素直になれさえすれば、やり直せると思っていた。
会って、謝って、素直に言えば、コウスケとまた走れると信じていた。
でも実際はそうじゃないのか?
もう二度とコウスケは俺と走ってくれないのか?
遅すぎるって、俺が変わるだけじゃダメなのか?
なんでだよ?遅すぎるって何だよ?
「なんでだよ?俺もっと素直になるから…走ってくれよ…俺と。なぁ…コウスケ?」
コウスケは目をそらしたまま。
「必要ってわかったんだよ…俺にはコウスケが必要なんだって……なぁ、コウスケ……ひとりで走っても……俺…楽しくねぇよ……」
必死に言う俺の口から、俺の気持ちが素直に出ていく。
それでもコウスケには届かなかった。
「傘やるから……もう…帰れよ」
俺の中で全てが崩れていく。
「コウスケ……なんでだよ………」
俺の声に力はなくなり、体は静かにドアを開けて、外に出ていた。
もちろん傘なんて持っていない。
ドアがゆっくりと閉まっていく。
コウスケは最後まで俺と目を合わさなかった……