気付いたら次の日になっていた。
俺は髪も服もまだ濡れたままの状態で、ベットの上にいた。
あの後の記憶が全くない。どうやってここまで帰ってきたんだ?
今のこの状態からして、だいたい予想はついた。
俺は雨に濡れながら帰ってきて、そのままベットに倒れこんだ。
起き上がると、頭がガンガンと痛む。寒気も感じる。
どうやら風邪をひいたようだ。
俺はふらつきながら風呂に行き、シャワーを浴びた。
あいかわらず頭は痛むし、寒気もおさまらないけど、意識がしっかりしてきた。
鏡に自分の裸体が写っている。
いつだったか、リレーでこけたときの傷の跡が俺の目にとまる。
ジュンキが変わったように…俺だって変わったんや…俺は前みたいに、ジュンキの気持ちに…応えてやれん……
コウスケの声が俺の中で響く。
俺は俺の気持ちをコウスケに伝えられたと思う
それでもコウスケは俺を拒んだ
これ以上俺は何をすればいい?
コウスケが俺の気持ちに応えられないってどういうことだよ?
変わったって、何がだよ?
今度は頭ではなく、俺の中身が痛んだ。
俺はこんな状態だから、入学式には行かずに、布団にもぐりこんだ。
打たれ弱い自分を情けなく思った。
昼ごろ、腹が減ってきたから飯を食おうと思い、ふたたび起き上がったのだが、状態はさらに良くないようで、熱を測ると38度を超えている。
おまけにすぐに食えるものがなくて、あるのは米、野菜、肉といった調理が必要なものしかない。
独り暮らしの洗礼をこんなに早く味わうとは思わなかった。
俺は、地元が同じで一緒にこの大学に来た、西田にメールした。
『俺、風邪で動けない。俺を助けれるのはニッシンだけだ。頼む、すぐに食えるものを買ってきてくれ。金は倍にして返すから』
より危機感を表現するために、片言な内容で送った。
ニッシンとは西田のことだが、俺の家を知ってるのはニッシンだけで、俺はこの頼みの綱を当てにして、ふたたび眠りについた。
起きたら夜の8時になっていた。
まだ頭は痛むし、寒気と気持ち悪さも感じる。
横になったまま玄関を見ても、食料らしきものは届いていない。
携帯を見ても、ニッシンからの返信はなし。
俺は舌打ちして、携帯を閉じた。
軽いものでもいいから、自分で調理しようと覚悟を決めて、重い体を起こしたその時だった。
「ピーンポーン」
チャイムが鳴った。
さすがニッシン!少々遅い気もするけど、ナイスタイミングだ!
俺はそう思って、フラフラと歩いていき、ドアを開けた。
「サンキュ!ニッシン……」
目の前にはニッシンよりも背の高くてガッシリとした体があった。
そしてまた、コウスケは突然現れたのだった。