「コウスケ……」
この状況を飲み込めない。
「入学式の後、西田に会った。そしたらジュンキのこと頼むって言われて、西田の代わりに俺が来ることになった。ジュンキが風邪にいたんは、俺のせいや思うし」
コウスケはあいかわらず俺に目を合わせないし、ボソボソと言った。
見ると、コウスケの右手には、いつかのボロバックがぶら下っている。
「レンジでチンすればすぐ食えると思う。今夜の分と、明日の分もある。あと水分とるとええから、スポーツドリンクも」
俺を拒んでおきながら、どうしてまた俺のためにここまでしてくれるんだろう
なつかしのボロバックは重そうに膨らんでいて、食べ物や飲み物がたくさん入っている。
急に目の前がぼやけてきた。
なぜだか俺の目は涙で溢れ出した。
涙はどうしようもなく流れ出て、肩の震えも止まらない。
俺は感謝の言葉ひとつ言えずに、泣いているのだ。
なんでなのかは俺自身わからない。
ただコウスケを感じて、泣いてしまう。
「お、おい……ジュンキ?どしたんや?」
久しぶりにコウスケと目が合う。それなのに、涙でにじんでぼやけてしまう。
「いや……なんでもないって…ただ俺……」
この後の言葉を言ったら、コウスケはどう思うだろう
また拒まれるだろうか
それでも俺は言ってしまいたい
俺は声が震えるのを堪えて言った。
「……必要だ…コウスケ……」
俺の弱い弱い本音が涙とともに流れていった。
すると、俺の体は一気に包まれた。
「すまん、ジュンキ。ホンマにすまんかった。俺やっぱ、ほっとけん、ジュンキのこと。なぁ、泣くなって」
俺を包むコウスケが俺に囁く。
久しぶりに聞く、優しい声だ。
それがまた俺を泣かせる。
コウスケは震える俺を強く抱きしめる。
それがまた俺を泣かせる。
コウスケの体は温かくて、それがまた俺を泣かせる。