三年生が引退してからは、毎日のように基晴に加えて一年の翔平の二人と一緒に帰っていた。
あっちから「優さん一緒に帰りませんか?」 といつも誘ってくれていた。たまたま帰る方向が同じで、他に同じ方向の奴がいなかっただけの話だ。
ちなみに、うちの部では後輩は先輩・先生などの人には敬語を使うという決まりがある。ふざけた決まりだ。
まぁ、中学2年生と1年生なんて『下』なことばっかり考える年齢だから、帰り道はそんな話が70%、いや、80%は占めていたと思う。
ある日、一緒に帰っている時に翔平が「優さん、下の毛って1年で生えてないとまずいですか??」と聞いてきた。
「え!?お前まだ生えてねーの?」
すかさず基晴がチャカした。
この時期に生えていたっけ、なんて考えながら俺はいった。
「そんなんすぐ生えて来るから気にすんなって。基晴は生えてんか?」
「俺が生えてるはずないじゃないですか。冗談ですよー」と基晴は笑いながらいったけど、まぁ嘘ではないだろう。
だって基晴は脛毛や腕毛なんて全くといっていいほどなかったんだ。その辺の女より肌もめちゃくちゃ綺麗だし、華奢だし。
この頃からだと思う。『可愛い後輩』から『性的な存在』に変わったのは。
あまりにも、華奢で声も綺麗で可愛いがために、俺の貧相な脳みそが女と錯覚したのかもしれない。
そう、これが、俺が男に興味を持ったきっかけだ。
基晴に会わなければ、もしかしたら俺はノンケのまま人生を過ごしていたかもしれない。どっちがよかったのかなんて、今の俺には決められない。
でも、基晴と出会えて良かったと思う。
――人を愛するということが少しはわかった気がするから。