春休みの朝練の時のことだった。
基晴が午後も一緒に練習しませんかと誘ってきた。もちろん翔平も一緒だ。
「ンー、いいべ。帰っても遊ぶだけだしな」
素っ気無いように振舞ってはいたけど、ごめん、内心はめちゃくちゃ舞い上がってた。だってあの憎き遅刻魔すらも今回ばかりは邪魔できないのだ。いるとしてもセンコーだけだ。
その日の午後、自分たち以外誰もいない広々とした体育館。いつもと全く違う場所にいるみたいだ。
「さぁーて何からするか。てゆーか、シューティングでいい?」と俺が提案。
本当は何が一番したいかなんて言わなくても分かるだろ。
「えー、シューティングはいつもやってるじゃないですかぁー」
翔平が駄々をこねる。
「てゆーか、めっちゃ声響きますねぇ。なんか俺らしかいないって感じですね!ってことで、1on1やりましょうよ!!」
俺らしかいないってことと1on1がどう関係あるのか知らないが、俺は大歓迎だ。
まぁ、これも言わなくても分かるだろ?(笑)
俺と基晴との勝負が始まった。先輩の意地として、負けるわけにはいかない。
俺がカットインしたときだ。基晴の手がボールをカットし損ねて、たまたま俺のアソコに当たってしまった。
「うわ!どさくさに紛れてどこ触ってんだよ、ヘンタイ」
まぁ悪い気はしないんだが。
基晴を見ると、めちゃくちゃ顔を赤くして突っ立っている。もしかして、照れてんのか?ときいてみた。
「照れてないですよ!!」
てゆーか、めちゃくちゃ顔赤いんですけど?照れてなかったら何だよって感じだ。
「でもめっちゃ顔赤いよー?」
っていってる翔平もめっさ赤いぞ? ヤバイ、めちゃくちゃこいつら可愛い。なんで二人とも照れているんだ?この年で男のモン触って照れるものなのか??
「てか優さん、彼女いないんですよね?」と基晴。
なんでその話がここで出てくるんだろう。
いない と答えた。
「ほんとですか!?よかったー」
俺はこの言葉をきいて決意した。午後練習を早くに切り上げよう と。
もうどうなってもいい。
俺の少なからず残っていた安っぽい理性は、天に召される寸前だったんだ。