親はまだ帰ってきていない。
俺はシャワーを浴びることにした。
高野の声が耳から離れない。
「高野・・・」
自分で思っている以上に重症なようだ。
鼓動が速くなる。
明らかに興奮している。
鏡で自分の姿を見る。
悪く言われた事はないが、褒められたこともあまりない。
スタイルはイイほうだろう。
一応太らないようにはしている。
「馬鹿じゃね」
自分に言い聞かせるように言葉にする。
手早くシャワーを浴び、体を拭く。
「ぁ、着替え・・・」
帰ってきてすぐシャワーを浴びたため、忘れていた。
両親はまだ帰ってきていない。
俺は全裸のまま部屋に向かった。
箪笥からテキトーに服を出し、着る。
一階に降り、歯を磨いた。
磨き終わったらまた二階の部屋に戻る。
いつもと変わらぬ一連の動作。
「寝る、もう寝る」
違うのは自分の意識だった。
つい考えてしまう高野の事。
頭の中で羊を数える。
羊を数えて高野のことを忘れる。
もしかしたら、羊を数えるコトを最初に考えた人も、
何か無意識に考えてしまう事を考えないようにするために、
「羊」を考え出したのかもしれない。
そんな事を考えているうちに、俺は眠っていた。
目を覚ました。
「起きたくないなぁ・・・」
春眠暁を覚えずとはこのことだろうか。
時計に目をやる。
まだ5時半。
暁を覚えないのも当然だ。
しかし、二度寝したら起きられる自信がないため体を起こす。
昨日し忘れたケータイの充電をする。
今からすればダイジョブだろう。
一階に降りる。
洗面所で顔を洗う。
多少は目が覚める。
トイレに行く。
立ってるのがツライので座る。
このまま眠れそうだが、なんとか起きる。
今日も保健室で寝ることが確定だ。
「高野・・・」
思い出してしまった。
意識しすぎだ、自分。
トイレから出て、部屋に戻る。
久しぶりにキーボードかギターを弾こうかと思ったが、迷惑なので止めた。
自分の馬鹿さに正直呆れてしまった。