じわっと。じわっと、汗が背中に広がり伝ってゆき、服を脱いだときには、その粒がズボンのゴムの部分に染み込み、ひんやりと湿っていた。誰も、いない更衣室。換気窓の向こう側からは、六年生の若々しい声が聞こえてくる。彼らは、僕が更衣室に訪れたときには既に着替えて、プールサイドにいた。朝からの絶え間ない緊張と、茹だる暑さからの束の間の、脱出。僕は、ほっとしながらすぐさま裸体になった。例のビキニは、何かの拍子に見つからないようにバッグの奥底に、沈めておく。
裸のまま仁王立ちをして、壁の前の鏡にむかう。やはり、水泳で日々鍛えている体は、みずみずしく、どこもかしこも滑らかだ。そして、長い間狭いビキニの中に閉じこめられていた、我が肉棒は、熱を帯びて、この更衣室の中で独りという背徳感に、むずむずと揺れていた。掴もうと伸ばした手を、ぐっと堪える。ここで、大きくしたら、小学生どもにバレてしまう。彼らのような、自分のに対する悪戯を始めたばかりのような、未熟な奴らに。それだけは、あってはならない。断じて。
予鈴も鳴り始めたし、誰かが入ってきたら危ないので、僕は急いでバッグから、キャップとゴーグル、そしてスクール水着を取り出した。しかし、取り出そうとしたのだが、ない。ない。どこにも。何故か、水着だけが、忽然と姿を消していたのだ。あの紺色の四角い、何の特徴もないような、ただの水着。
どこに行ったのか、記憶を必死に手繰り寄せてみる。今朝家を出発するときは確かに、あったはず。そして、教室に来て、机の横にバッグをぶら下げておいた。
もしかして、生徒の誰かが盗んだのかと疑ってみる。だが、何の為に?見当もつかない。まあ、盗む機会は、いくらでもあったろうが。
取り敢えず、どうしようか。体験初日から、プールサイドで見学というのも、あまり印象がよくないだろう。どこかに、丁度よく水着の余分がおいてないだろうか。
探していると、隅の籠の中から、いかにもこれを穿けと言わんばかりに、それは広げて置いてあった。
「こ、これは」
これは、あくまで僕視線なのだが、それは、とても際どい代物だった。あぁ、こんなのを穿いて現れたら、彼らはどんな顔をするだろう。白無垢の、サポーターに近い、使い古されたブーメランタイプのそれを手に、穿くという危険な賭けとは裏腹に、僕の背中は、ぶるっと期待に背中が震えた。きっと、彼らはいやらしい顔で、白い布切れにくるまれた僕の股間に凝視するだろう。なかにはそれを見て水中を好いことに、勃起する者も、あるいは密かに己のいきり立った肉棒を弄る者もいるかもしれない。そして、家に帰ったら、彼らは今日一日の総決算として、その光景をつぶさに思い出しながら、自慰にふけるのだろう。きっと。
気がつくと、僕は既に、その水着を身にまとい、また鏡の前に、腰に手をあて仁王立ちしていた。上向きに入れた肉棒は、なかなかキツい締め付けに、微かに甘い悲鳴を奏でている。その形ははっきりと捉えられる。毛深い陰毛も、僅かにはみ出ていたが、まあよしとしよう。
この姿ではマズいと、理性は警告する。だが、僕の露出欲と、自らへの少なくない自信、そしてた小学生に対する期待が、それをまさに海原のように呑み込んでしまった。あぁ、僕は、相変わらずの愚か者だ。