寒くて、頭が痛くて目が覚めました。目眩がして、視界が安定しませんが、どうやらここはトイレの個室のようでした。
目が見えるようになってきて、自分のワイシャツがはだけていること、ズボンとパンツがずりおろされていることに気付きました。
「え……?」
蘇る微かな記憶。部長の手が、舌が体中を這いずり回る感触が蘇ります。部長の荒い息。
「う、うわ――!!」
俺は個室を飛び出しました。洗面台に寄りかかって、鏡を見ると、顔に白いドロドロとしたものがついていました。それが何なのかは一目瞭然でした。
服装を正して、勢いよく水を出し、俺は顔を洗いました。これは夢だ、これは夢だ、と言い聞かせました。……が、これは残念ながら現実でした。
重い体を引きずってオフィスに戻ると、自分の椅子にネクタイがかけられていました。
また目眩がします。現在時刻は深夜2時。パソコンとまた向かい合って、狂ったようにキーボードを叩きました。
「おはよう」
俺はソファの上で飛び起きました。部長が立っていました。俺は声も出せずに口をパクパクしていました。
「終わったか?」
「……は、はい。一応」
「そうか。良かった。緊急だったから助かったよ」
「……」
「コーヒーいるかい?」
ビクッと体が反応しました。
「い、いえ、結構です」
部長がため息をつきました。
「……ふぅ。残念だな。谷中くんの淫らな声をまた聞けると思ったんだがね」
俺は君が悪くなって、オフィスを飛び出しました。トイレの個室に駆け込んで座り込みました。
つづく