駅までの道のりは意外と遠くて、歩くと20分ほどかかる。ちょっと寒かったけれど、駅に着く頃には汗が少し出ていた。電車の時刻表を見ると、後30分待たないとダメみたいで、仕方なく駅の改札口の近くで時間を潰すことにした。
淳士「寒いな…」
さっきは汗をかいたが、急に風にあたったためか、冷えてきたので軽く身震いをした。夏といっても夜風は少し冷たいものですね。両肘を掴み身体を温めようとしてると、突然何かを被せられた。はっと見上げとそこには悠介の顔が…。
悠介「こんなとこで何してんの?笑」
淳士「いや…武人にギター教えて、それから電車待ってて…」
悠介「なんでここなんよ(笑)とりあえずそれ着とけば?」
そう言われて気付いた。悠介は上着を俺に被せてくれてたんだ。
悠介「俺もう帰るわ。また今度会うときに返してくれたらいいからさ。じゃあね〜」
そう言うと自転車で去っていく。
淳士「待って…待ってよ!」
でもその声は届かなくて、風にさらわれてしまう。俺は服をギュッと抱きしめる。悠介の匂い…少し汗臭いけど、なんだか落ち着くんだ。時計を見るともうすぐ電車が来る時間。俺は急いで改札口をくぐった。
家に帰ってからメールを送った。
淳士「今日はありがとう。なんで駅前通ったん?普通は通らんやろ?俺が駅にいるの知ってたん?」
しばらくすると返事がきた。いつもより少し遅い気がした。
悠介「どういたしまして。実はさ、武人から今日はギター教えてもらう日って聞いててさ、もしかしたら居るかな〜って思って。でも行って良かったみたいやな(笑)寒がってたしな〜」
そうか…わざわざ会いに来てくれたんだ…寒がりなの知ってて上着を持って…。その優しさに涙が出そうになった。
淳士「そうなんや。ありがとう!ホンマ助かったよ〜。風邪引きそうになるとこやったわ(笑)上着いつ帰したらいいかな?」
悠介「いやいや、いいよ(笑)せやな〜上着は今度の勉強のときにお願いするわ」
淳士「了解〜 ちゃんと洗っとくからね(ハート)」
悠介「ありがとう(笑)じゃあまた連絡してな〜」
淳士「うん!わかったよ〜」
とメールに夢中になってて、気付けば駅を乗り過ごしてしまった。つくづく悠介に夢中なんだな…って自分で思ってしまった。
でも結ばれるはず無い…。相手は誰にでも優しくしてるようなタイプの人間だし、いざ告白すれば全てが終わる…そんな気がして、踏み出せなかった。