休憩していなさいと伝え私は服を脱いだ。
社の近くの岩清水で禊をし始めると隼は何をしているのかと尋ねてきた。
「禊といって、身体を清めているんだよ。」と言うと隼も服を脱ぎ私の真似をして岩清水で身体を清め始めた。
水の冷たさに『ひぃっ』と声が溢れていた。これは彼なりに考えた山との向き合い方なのかもしれないと思い、隼のやりたい様にさせてあげた。
袴に着替え社の前で祝詞を唱え始めた。
少し離れた場所で隼が傍らに全裸で正座をして頭を下げていたが、私は気にせず祝詞を唱え続けた。
祭祀を終え服を着替えると隼も服を着た。
何で全裸で正座してたのか尋ねると「勇人さんの近くに居たかったんです。でも僕はその神様の服を持ってないから神様の前では裸でいました。」と答えた。
何で頭を下げていたのかと尋ねると、「恭しい気持ちになってなんとなく…」とのこと。
ぶっきらぼうではあるが隼なりに考えての行動だったのだと思い、「もう終わったんだから服を着なよ。」と促すとみきゃんを着ていた。
ピンクだな、と笑うと「勇人さんが買ってきたんでしょ」と少し声を荒げたので「ごめんごめん、そうだったね。似合ってるよ。と言うといつもの笑顔がやっと戻った。
「じゃあ…下山するよ?」とリュックを背負うと一瞬にして隼の表情が曇った。
「下りる方が楽ではあるが滑落など危険な事が多い。ゆっくりでいい、自分のペースで歩きなさい。
大丈夫、必ず山道には終わりがあるものなんだ。」
「はい…」とか細い声を発するので、「気合いが足りん!」と言いながらお尻を思いっきり引っ叩いた。
「はい!頑張ります!」と元気よく大声で発した言葉は周囲の山々に木霊して彼を元気付けている様だった。