車のエンジン音とライトの光が近づいて来たのがわかった様で大きく手を振って出迎えてくれた。
隼は辺りを流れる山水で右足を冷やしていた様だ。
「これ、冷たくて気持ちが良いんです。」笑顔でそう教えてくれた。
車のライトで照らし隼の足首を見ると、外踝側が腫れ上がっていた。
「これは痛いはずだ。良く我慢したね。」と頭をグシグシしながら言うと「こんな腫れてるとは思っていませんでしたけど、少し楽になりました。ありがとうございます。」と嬉しそうに言った。
水汲み用のバケツに山水を半分ほど入れ助手席の足元に載せ、隼の足を冷やしながら常備薬のロキソニンを飲ませた。
車を走らせるとサスペンションで吸収出来ない縦揺れで水飛沫が散った。バスタオルを足の隙間に当てて蓋がわりにする。
「もう濡れないか?」と聞くと「今日3枚目のバスタオルもビシャビシャですね。」と笑いながら答えた。少し痛みも落ち着き余裕が出てきた様だ。しかし車の揺れに連動し発する痛みで今日は最後まで寝る事なく街中まで降りた。
早めに冷やしたのが良かったのか、右足の腫れは大分治まり、足首を多少動かすことが出来る程度まで回復した様だ。
「明日、病院で診てもらうか。」と言うと、「僕、ダメなんです。保険証がないんです。」といいながら財布から保険証を出した。
「料亭の時のだからもう期限が切れていると思います。」とのこと。病院にも行けない状況をどうにかしないと…と思うに至った。
「そんなことより、今知ったんだけど、『野村』君って言うんだね。」「、そう言えば、言っていませんでした。でも本当は親戚の名前なのであまり好きではないんです。だから、今まで通り『隼』って呼んでください。」そう笑顔で話してくれた。
「愛媛県での仕事は終わりなので、広島県まで戻ろうと思っているんだが、このまま向かっても良いかな?」と言うと、「はい、わかりました」とのこと。元気は戻ってきたみたいだ。
バケツの水を捨て、バスタオルで拭き取ると右足を一周する様に湿布を貼った。
少しヒヤッと反応したが、やはり腫れている右足は気持ちよさそうだ。
そのまましまなみ街道を北上しているうちに隼は寝てしまった。
昨夜の様な悪戯はせず、時折股間を触り位置を『確認』する程度で留めておいた。