部活を終えて飯を食い、寮に帰って風呂に入って部屋に入ると、電気をつけっぱなしで先輩が寝ていた。
今日の練習ハードだったもんなぁ。そうとう疲れてたんだ。
俺はベッドの横に座り、先輩の寝顔を眺めた。
言うまでもなく、先輩は寝顔もカッコいいわけで。
ホントこの人は何でも兼ね備えてんなぁ…
こんな完璧な先輩だから、もちろん疎む人もいた。
調子に乗っているとか、天才はうらやましいとか。
でも俺は知っている。先輩の一番すごいところは、何事にも全力で努力するところなんだ。
今の先輩があるのは、もちろん多少の才能があるにしても、その上の努力あってこそなのだと。
俺はそんな先輩が愛しくて、好きでたまらなかった。
あの日俺が男に想いを寄せていることを知った先輩。それでも俺との関係を壊すまいと、いつもと変わらず接してくれた。
その先輩の優しさに俺も応えないとなぁ。
俺がいつまでも先輩のことを好きなままだと、きっといつかこの関係をぶち壊してしまう。それだけは絶対ダメだ。
好きで好きでたまらないけど、先輩を失うことだけは絶対にしたくない。
ちゃんと諦めないと。
俺はこの想いを断とうと心の中で決意した。
そして、
これで最後だ
と、そっと先輩に顔を近づけ、優しく、先輩の頬に口づけをした。
気づけば、先輩のベッドに顔を押し付け、声を殺して泣いている自分がそこにいた。