本当に申し訳ないです。更新が途切れてしまって。最近ちょっと忙しくて。もうこのスレもだいぶ後ろのほうに行ってしまって、それでも更新されてないかなと覗きにきてくれる人がいたら本当に申し訳ないです。しかも一番いいところで止まっちゃってますからなおさらです。これからも細々とこのスレを使って更新していきたいと思います。よろしくお願いします。それでは、どこまで書けるかわからないですけど、続きをどうぞ。
「じゃあ、今日は帰るわ」
大史の家の玄関先で、靴を履きながら言った。
「うん……今日はありがとね」
靴を履き終わった俺は立ち上がって大史のほうに向き直った。
「いや、俺の方こそ、ありがとう」
俺が素直に言うと、大史は屈託ない笑顔を見せてくれた。
「またメールしていい?」
無邪気な大史に俺はつい笑ってしまった。
「いいよ」
「また電話していい?」
「電話するくらいなら会いにこればいいだろ」
俺はおどけて言った。
「ねえ、明宏、今度いつ遊べる?」
「大史はいつ空いてるんだ?」
「俺はこれから一週間は休みなんだ。また一週間後からクラブが始まる」
「そっか。相変わらず忙しいな」
俺がそういうと、大史は、まあねとうなずいた。そしてすこしの沈黙。大史は恥ずかしそうな笑みをうかべて、なにかを言いたそうでなかなか言えないといった素振りをしていた。
「……あのさ、明日遊べない?」
「何時から?」
「朝から。明日母さんが友達と出かけるらしいんだ。だから夕方まで帰ってこない……その間、俺、一人なんだ」
(それって――)俺はそれを聞いて思わず生唾を呑んだ。急に鼓動が高鳴った感じがした。鼓動を落ち着けて言った。
「い、いいよ。わかった。明日は部活休むよ」
「ほんとに!?」
「ああ。でも明日だけだからな」
「うん!ありがとう」
「じゃあな」
そう言って大史の家を出た。大史は玄関まで見送りに着てくれた。すこし離れてから後ろを振り返って、最後に大史に手を振って、家に帰った。
次の日の8時半に自宅を出た。昨夜は全然寝付けなかった。それもこれも大史のあの意味深な発言のせいだった。
大史の家には8時40分ごろに着いた。インターホンを鳴らして家に入った。うながしてくれたのは大史のお母さんだった。
「あら、明宏くん。朝早いわねえ」
「おはようございます」
「大史まだ寝てるかもしれないわよ」
そう言って一階から大史の名前を呼ぼうと息を大きく吸い込んだ。俺はすぐに制止した。
「あ、いいんです。寝てるなら寝かしといてやってください。あいつもクラブから帰ってきたばっかで疲れてるだろうと思うし」
「そうね」
「おばさん、今日はどこにでかけられるんですか?」
「今日はね、お友達が映画に誘ってくれてね、その後に食事をしてお買物をしてってちょっと遊んでくるのよ」
「それでそんなにおめかしなんですね」
「ちょっと張り切っちゃった」
「きれいですよ」
「もう、明宏くんったら」
そう言うと、おばさんは俺に抱きついてきた。言動も行動もとても若かった。前に大史に聞いた話では40歳手前だと言っていた。若いお母さんはいいなと思った。
おばさんは時計を見ると、急に慌てだして、
「あ、もうこんな時間。そろそろ行かなきゃいけないんだけど……」
「留守番は任せてください」
「明宏くんって本当に頼もしいわよねえ。大史なんていつも能天気で何を考えてるのかわからないわ」
俺は笑うしかなかった。
「じゃあ悪いけど後はよろしく頼んどくわね」
「はい」
そうしておばさんを玄関先まで見送った。
「じゃあ、よろしくお願いします」
「任されました。いってらっしゃい」
おばさんは出て行った。
おばさんがいなくなった大史の家はとても静かだった。外の小鳥の鳴き声が聞こえてくるくらいだった。
俺はとにかく大使の部屋に向かった。
大史はまだ熟睡中だった。片足を布団から出して、ベッドに大の字になって眠っていた。
「こいつ、相当寝相わるいな」
大史の顔をのぞきこみながら小声で言った。しかし掛け布団はしっかり着ているせいで、首筋や額に汗をかいていて、額には前髪がべったりと張り付いていた。
俺はそれをかき分けてやると、額や首筋の汗をぬぐってやった。なんだか病人を看護しているようだった。いつもなら俺より早起きで、いつも俺にモーニングコールをしてきてくれた大史だったから、大史の寝坊を目の当たりにするのは珍しかった。その分、相当疲れがたまっていたんだということもよくわかった。
それにしても、整ったきれいな顔つきだった。鼻筋が通っていて、クラブの合宿で日焼けしたのだろう、肌も褐色に焼けて健康的な印象に見える。さらに寝顔まできれいに保てるなんて、どこまでも完璧なやつだった。
なかなか起きない大史を無理矢理起こすのもかわいそうだと思い、大史が起きるまで一人で遊ぶことにした。窓から景色を眺めたり、机の上に置いてあったプリントやいろんなものを眺めたりしていた。最後には本棚からマンガを取り出して、ベッドを背凭れ代わりにして読んでいた。
30分くらいそうして本を読んでいると、後方のベッドががさついて、大史がとうとう起きだした。上体を起こした大史に、「おはよう」と一言。すると、すぐに眠気が飛んだようで、「今何時!?」と時計を確認した。大史の家に来てすでに50分くらいが経過していて、10時すこし前だった。
「なんで起こしてくれなかったの!?」
「なんでってせっかく気持ちよく寝ていたし」
「もう10時前じゃん!ああ、最悪だ」
「最悪っておおげさな。たった1時間だろ。あと何時間あると思ってんだよ」
「そうだけど……」
「そんなこと言ってないで早くシャワー浴びて、着替えてこいよな」
「ごめん。すぐ戻るから」
「ああ」
大史はそういうと、部屋を出て行った。俺はその間、マンガの続きを読むことにした。
10分ほど経ってから大史が現れた。上下黒と赤のカラーのスポーツジャージ姿だった。
「あー、さっぱりした」
「布団かぶりすぎなんだよ。汗だくだったぞ」
大史は恥ずかしそうに笑った。
その後は大史の家でだらだらと過ごした。二人ばらばらに違うことをしたり、ゲームをしたり、話をしたり……。今日は本当に休みを満喫するという名目で、しんどいことは二人とも避けたかったのだ。
お昼ごろになって、大史が口を開いた。
「お腹空かない?」
「じゃあコンビニになにか買いに行こうか?」
「うん」
そうして二人でコンビニに向かった。
コンビニでおにぎりやお菓子なんかを大量に買い込んでまた大史の家に戻ってきた。玄関先で大史が、「俺、お茶持って行くから」といってリビングの方に向かった。俺は「おう、じゃあ先部屋に行ってるわ」と言って階段を上って大史の部屋に一足先に向かった。
大史の部屋は涼しかった。部屋に窓が二箇所にあって、風が部屋を通り抜けるのだ。コンビニに行っただけなのにじっとりと汗をかいて、その表面にうかぶ汗に風が当たって冷やされるのが清々しかった。
俺は部屋の中央にあるテーブルの横に買物袋を置くと、その中から昼飯を取り出した。おにぎりや菓子パンが大量にテーブルの上に積み上げられて、我ながら絶対に二人分じゃないと、今頃になって唖然とした。
とにかく、俺はその中のおにぎりをひとつつかむと、ビニールをはがして早速食べだした。一口おにぎりにかじりついたとき、部屋のドアが開いて、大史が入ってきた。
続く。