相手はチャリ。とはいえ、ここは坂道の一番上。彼らはどんどんスピードを上げて坂道を下っていく。オレが追い掛けはじめたとき既に視界に彼らの姿はなく、一瞬「もう無理かも」とも思った。が、それでもこっちの足は車。坂道を下り切ったところで追い付けた。そして追い越しの瞬間はわざとスピードを落とし、歩道を走る5人のうち誰か1人にでも見られるようにゆっくり走った。このときも左手は未だ収まる気配のないアレに添えて、静かに上下させてみた。
誰が目撃したかは分からない。目撃されなかったかもしれない。ただ、その先の交差点が赤信号だったため、また彼らが接近してくる形となった。オレはもう最後のチャンスだと思い、今回は3度目の正直的なノリで助手席側の窓を前回にして、より見やすくさせてみた。しかも、そうでなくても交差点は明るく照らされていて、十分に覗かれやすい環境だ。オレは、何をしてるんだという思いと頑張ればノンケをいただけるかもしれないという希望で興奮しっぱなしだった。
後ろに車がいなかったため、信号が青になってもしばらく止まっていた。視線も開いた窓の外に向けていた。
もうすぐ来る…!
見られたかどうかしっかり見たら、今度はさらに2人に無事見られたようだ。まあ、だからといって何かがあったわけでもなく、彼らは一瞬「おっ!?」という表情を見せただけで、そのまま交差点を左折して消えていってしまった。やっぱり現実はよくある体験談のようにはいかないようだ。オレは淡い期待を捨て、生まれて初めてのプチ露出体験ができただけでもよしと前向きに考えることにして、半ば諦めモードで左折した。家とは真逆の方向である。