「好きだよ」
そう答えたEの吐息が僕の唇に触れた。
毎日のように肌を触れ合わせていた僕らは、はじめて心を心を触れ合わせた。
僕らははじめて互いの気持ちを確かめ合い、そして初めて自分の気持ちを打ち明け合ったのだ。
Eは続けた。
「言っとくけど、オレはホモじゃないよ。
Mくん以外の男の人を見てもなんにも思わない。
でも、なんでか知らないけどMくんのことは好きなんだ。
なんでだろ??自分でもよくわかんないけど」
Eは一息に思いをぶちまけると、僕の首元に顔をうずめた。
そして、顔をうずめたまま「Mくんは??」と不安そうに僕にたずねた。
「オレも… オレも同じだよ」
僕はEの髪を撫でながら答えた。
「オレもEのことが好き。
Eだけは特別。
E以外の人には何も思わない。
なんでかよくわかんないけどね…」
僕は半分、ウソをついた。
Eのことだけを特別に好きだというのは本当だ。
でも僕はEとは違って、自分が同性愛者であることは確実に自覚していた。
自分が同性愛者であること言ってしまったら、はじめて僕がEを誘った時に「遊びだよ」とウソをついていたことも露呈してしまう。
なにより「気持ち悪い」と、Eに嫌われてしまうかもしれない。
Eに合わせて、「なぜだかわからないけど、例外的に好きになってしまった」ということにしておくしかない。
僕はこの期に及んでなお、情けない打算を働かせていた。
「ホントに??」
そんな僕の心情を知ってか知らずか、Eは顔をあげて僕を見つめた。
「ホントに」と言って、僕はEを見つめ返した。
「ホントに好き??」
「ホントに好き。Eは??」
「ホントに好き! …どれくらい好き??」
「こ れ く ら い!!! …Eは??」
「これくらい!!」
僕らは馬鹿みたいにはしゃぎ合って、馬鹿みたいに強く抱きしめ合って笑った。
安っぽいドラマみたいに臭いセリフだが、自分でも驚くほど素直に、自然に言うことができた。
「愛してる??」
「愛してるよ。 …Eは??」
突然、真顔で聞いてきたEに僕も真顔で答え、真顔で聞き返した。
「愛してる」
僕の首筋に顔をうずめて、Eは答えた。