ポカンとなったのは俺も同じだった。
3番のぶなんでしょ、早くして、とみちがせかす。
准くんが、マジで?って、笑いつぶやいたので、俺もハズいねと相槌を打った。准くんはシャツをめくり、はいと言って俺の前に立った。
准くんの体は、見た目の細さと裏腹に、筋肉が発達していて、均整の取れた体だった。水泳体型ともいうべきか、腹筋もしっかり割れていた。
俺は正直、嬉しいというよりも目のやり場に困ったが、触っていいよ、という声で、俺は両手を脇に添えて、親指で軽く乳首に触れた。
触れた瞬間、はぁんと声をあげ、少し息が増したのが、分かった。
俺はウケなので、他人の乳首を触る機会とかそんなになかった。
というより、もっと正確に言うなら、俺は今まで前戯だとか、俺を大事にしてもらったという実感を伴ったエッチをした事がない。
どういう風にすればよいのか分からなかったが、揉んでると少しずつ固くなってきて、感じているのが伝わってきた。
俺は乳首よりも脇に添えている手の感触に興奮していた。お腹も触りたいと思ったけど、それはだめだろう 准くんは俺の耳元で、もっと強く揉んでいいよ、と囁いた。俺は軽くつねりながら、弄ってみた。
さらに息が荒くなる。
もうすでに俺は勃っていたから、みんなにばれないか冷や冷やだった。
そして、准くんがもう無理と言って、みちに合図を送った。
もういいよ、という言葉と共にシャツを元に戻した。 帰りがけにじゅんくんが「キモチ良かった。エッチしたくなったよ」とそっと言ったので、あまりの恥ずかしさに、顔から火がでそうになった。
俺は多分、もう准くんが好きだ。最初に会った時から、気になってたけど、はっきり自覚できた。
その後の王様ゲームでは結構ハードなのもあり、例えば、ディープキスとかコップの氷を口移ししたり、エッチのまね事をしたり、等あったけれど、准くんと絡む事はなかった。
俺はキスとかよりも、抱き付くとか、臭いを嗅ぐとかの方が緊張したし、恥ずかしかった。
終電も近くなり、帰る者もちらほら。
王様ゲームの雰囲気でもなくなったので、カラオケをする事に。
この時点で残ったのは、准くん、俺、みち、谷、愛斗、大河、亮佑、変態こうの8人。
亮佑はタクシーで帰れる距離。
俺と愛斗は地元ではないから、帰ろうとしたけど、准くんの家に泊めてもらう事になった。
そして、谷から順に歌う事に。
中島美嘉を選曲した。
谷が歌っている時、准くんにメールが来た。
准「これから苫小牧から飲み会にくるって」
谷「昨日言ってた18歳の子」准「バイト終わって、今から終電でくるって」
みち「マジで?うちらもういないんじゃない?笑」
准「どうしょっか?」
みち「カワイイの?」
准「普通にカワイイと思うけど。」
みち「じゃあ呼びなよ笑」
准「なにそれ笑。じゃあ呼ぶね」
もし可愛くなかったら、呼ばなかったのだろうか。おそるべしみち。
それより、この深夜に苫小牧から札幌にくるとは。
1時間半はかかるだろう。BoAのメリクリ。
谷の次はみちるだ。
みちるの歌ははっきり言ってプロ並だ。
もう声がでないと言ってても、高音の圧倒的な声量には舌を巻いた。
テレビに出ている、名前も知らない歌手よりずっと迫力があった。
みちるの後は、准くん。歌うかぁと、少しはにかみおもむろにマイクを取りだすと、番号も見ずに転送した。
サスケの『青いベンチ』だった。
友達でも歌が上手い人は何人かいる。
でもそのどれともまるで、レベルが違っていた。
高い声から低い声までどの音も明瞭に富み、リズムと感情表現が完璧に調和されている。
また耳に留まる、哀愁漂うぐっとくる艶のある声。
歌詞も凄く切ない。
『この声が枯れるくらいに君を好きと言えば良かった、もう二度と戻らない恋、痛みだけが、ちょっと動いた』
歌も終わりに差し掛かり、俺は不覚にも涙ぐんでいた。誰も見ていないので、助かった。
何巡かしていると、またメールが来た。
准「18歳もう新札に着いたって。俺、店の前に迎えにでるから。誰か一緒に来てくれる人いる?」
誰も返答しなかったので「俺、いこうかな」
准「じゃあよろしくね」
18歳を迎えに行く事になった。