「高校生No.1右腕の青山浩介だってさ」
となりで山本くんがスポーツ新聞をひろげてみせた
僕はいま
友達の山本くんと2人で市営球場へ来ている
山本くんが
「野球部の応援いこうぜ」
と言うので仕方なくついて来たが
野球のルールも知らない僕には退屈でしかない
「すげーなー!!青山先輩
スポーツ新聞の1面だもんなー憧れるなー」
マウンド上で躍動するエースに山本くんは夢中だ
「イケメンで背も高くて
頭よくて運動神経抜群
…俺、青山先輩だったら抱かれてもいいかも(笑)」
とふざけながら笑ってみせた
「そんなにすごい人なんだ?青山先輩って」
「バカ!!すごいってもんじゃねーよ!!卒業したらプロだぜ?」
「ふーん」
僕も青山先輩のことは知っているが野球のことはイマイチよくわからなかった
そんなことを話している間に
試合は終了していた
青山先輩の2安打完封というオマケつきだった
席を立つと山本くんが
「プロ行く前に青山先輩のサインもらっとこうぜ」
と言い、僕らは出口へ向かった
大勢の女子生徒に囲まれながら出てくる青山先輩を見かけると
山本くんは
女子生徒の輪の外から
大声で叫んだ
「青山先輩!!サインくださーい」
青山先輩はその声に気づき
こっちに顔を向けると
「ぉお!?来てたんだ?野球に興味ないって言ってたのに(笑)」
と言って僕らの前まで来ると
僕の胸をポンと小突いた
僕が
「先輩ってすごい人だったんですね(笑)」
と笑うと
となりで
いまだ状況をつかめていない山本くんが驚いた顔をしていた
僕と青山先輩は
ちょっとした顔見知りだった
1週間前
僕は偶然、青山先輩と出会った