朝日がカーテンの隙間から差し込んでくる・・・
ケータイのアラームが部屋に鳴り響き、部屋の外から母親が「早く起きなさい」
と叫んでいる。
俺は眠い目を擦りながらベッドから起き上がった。
真新しいカバンに一通りの道具をつめ、
真新しい制服に袖を通す。
今日は待ちに待った高校の入学式だ。
朝食を済まして外に出ると、春らしい風と匂いに包まれた。
まるで俺の入学を祝うかのように公園の桜も満開だ。
俺は地元から少し離れた高校に通うことにした。
中学時代にはあまり良いことがなかったからだ。
だから、同じ学校からは誰も行かないところを選んだ。
学校に着いて、案内された教室に入る。
すでに、何人かが来ていた。
指定された席に座る。
隣に座ってるやつが声をかけてきた。
?「おはよう!俺、小田切心平(おだぎりしんぺい)。よろしく。」
紘「よ、よろしく。俺は黒川紘毅。」
俺は人と接するのは好きなほうだが、初対面の人と話すのは苦手でどうしても口数が減ってしまう。
心「なんか部活とか決めてる?」
紘「いや、まだ何にも。でも、詩書いたりするの好きだから、文芸部かな?」
心「そっか、俺は軽音部に決めてるんだ。」
紘「楽器得意なの?」
心「弾くのも好きだし歌うのも好き。ただ、俺は文才ないから詩がかけないんだよね。」
苦笑いしながら心平が言った。
紘「そうなんだ。俺も歌うのは好きだよ。楽器は全然だけどね。」
心「じゃぁさ、俺と一緒にケイオン入ろうよ!文芸部なんて暗そうじゃん!」
紘「そうかな?でも俺なんかにできるかどうか・・・」
心「大丈夫。俺がサポートするからさ。それに紘毅の詩に曲付けてみたいし。」
なんだかほんの数分前にあったばかりなのに、一気に心平と近づけたような気がした。
紘「うん。がんばってみようかな。ただ、小田切君の足引っ張るようなことになったらごめんね。」
心「気にしないって。そんなんよくある事。それにもう俺らは友達だろ?」
友達と言う言葉に妙に反応してしまった気がした。
紘「うん。小田切君とはいい友達になれそう。」
心「つか、心平とか心ちゃんでいいよ。苗字であんま呼ばれないから。」
紘「うん。心ちゃんよろしくね。」
心「おう。」
「そろそろ時間だぞ〜」
先生から声がかかった。
これが、俺と心平の出会い。
悪いことばかりだった中学時代とは違う、何かが動き始めた瞬間だった。