ゆうた先生は僕の髪を優しくなでながら過去を打ち明けてくれた。
「俺もな、宏之ぐらいの年に、男が好きなんやって気づいたんや。それまで何人もの女の子にコクられても全然興味なくてな。それが別に変とも思わんかった。男でも同級生に対して好きっていう感情が湧いたことはなかった。でも高校入ってすぐ、歴史を教えてくれていた先生のことが好きになったんや。あんな気持ち、初めてやった。イケメンやないし服装も地味やけど、すごく教え方がうまくてな。歴史の必然性みたいなものが分かったんや。教える時の一生懸命さとか、時折見せる笑顔とか、大人の魅力に満ち溢れていた。俺が教師を目指したのは、その先生がいたからや。授業では触れない話をいろいろしてくれてな。信長と森蘭丸みたいに、男が男を寵愛するなんて昔からあったとかな。自分の気持ちに素直に生きろってメッセージやったのかもしれんな。その先生はこっちの世界の人やないのに、俺のこと気遣って可愛がってくれたんや」。
「僕、ゆうた先生が好き」。
「宏之が俺のこと、どう思っているかは気づいてた。俺がその先生に対して抱いていた思いとそっくりやと思う。好いてくれるのは嬉しいよ。でも先生と生徒は一線を越えたらあかんねん。宏之がもっともっと日本の歴史のこと、興味を持ってくれることが、一番の幸せや」
僕はゆうた先生の愛人にはなれない。まして恋人にも。それは分かってた。あきらめているのに、横に座って髪をなでられているだけで股間が熱くなる。でも、こうして遅い時間まで付き合ってくれる先生に、これ以上何も求めたくなかった。ただ最後に1つだけどうしても聞いておきたい。
「チビ…じゃなかった柴内先生とは長いの?」
「まだ半年くらいや。会う度に過激になってなあ(苦笑)。レスリングで日本代表候補までなった人やから、体の鍛え方は半端ない。宏之が知っての通り、俺って競パンフェチやけど、教師フェチなのかもな。今まで付き合った人、みんな教師やから」。
「そっか。それにしても、2人ともとんでもないエロ教師だね(笑)」
「はははっ。そうやな。ごめんな、宏之」。
ゆうた先生は僕のほっぺに軽くキスしてくれた。
その後はどうやって家に帰ったのか全然覚えていないんだけど、あの日の部室での出来事は1枚のDVDを再生するように頭の中で鮮烈に再現できる。先生の笑顔も優しさも匂いも弾力のある腕の筋肉の感触も、そして競パン姿で縛られあえぐ姿も。こんなにためになる人生の勉強ってなかった。最高の個人授業。
僕は今日もゆうた先生の授業に身を入れる。もちろん歴史の教師になるために。(おわり)