その男は三十過ぎの腹の出たおっさんだった。見た瞬間これが俺の現実なんだと思った。
男は取り合えずご飯に行こうと言い、ファミレスに行った。男は終始ニタニタして気持ちが悪かった。色んな質問をされたが適当に相槌をうってほとんど何を話したか覚えていない。
喋ることも尽きたか、男はホテルを用意しているからと言ったので黙って従った。ホテルは近くの安いビジネスホテルだった。
ホテルに着いてからシャワーを浴びてベッドで男はいきなりキスをしてきた。やっぱり気持ち悪かった。
そのとき俺は裕也のことがずっと頭にあった。男は俺の下半身に巻いてあるバスタオルを解いて下半身を舐めまわしてきた。目を閉じてそこにいるのは裕也だと思い込もうとした。
「気持ちいい?」
男がそう言った瞬間我に返った。
俺「やっぱり無理。ごめんなさい…」
男はきょとんとしていたが俺は急いで服を着て部屋を出た。
家に帰る途中涙が止まらなかった。自分のやってること、やってる最中裕也を想像したこと、全てが悲しかった。
駅でぼんやり電車を待っていると、声をかけられ、振り向くと信也だった。俺の顔を見て信也はかなり心配そうに
信也「大丈夫?」
と言っていた。俺は何でもないよ。大丈夫と言ったが、
信也「なんか心配だから家寄っていきなよ」と言ってくれた。
それは無理だった。裕也に合わせる顔が無いし、今は会いたくなかった。
次の日も学校で裕也とは一言も話すことができなかった。