俺の腕を掴む直樹は手は力強かったが背中は心なしか弱々しく見えた…気のせいだろうか……。
無言のまま階段を上がっていき一番上で腰を並べて座った。
直樹「……」
俺「……」
無言の時間が暫く続いたが何故か気まずくは無かった、お互いに。
寄り添って座って直樹の温もりを感じているうちに何となく話したいけど話せないことがあるんだなと俺は思った。
いつもとは逆に俺は右腕を伸ばし直樹と肩を組んだ。
俺「何かあった…?」
直樹「……」
前を見つめながら無言のまま。
俺「俺で良ければ話聞かせてよ…」
俺も前を見つながら言った。顔をみながらだったら余計に話づらいかなと思って…。
俺は組んでいた直樹の肩をポンポンと叩く。
直樹は俺の右肩に顔を倒してきた。
直樹「モンキー…。俺、何か疲れちゃった…。」
俺「……」
俺は子守唄を歌いながら赤ちゃんをトントンと叩くように優しく直樹の右肩を叩き続けた。
直樹「俺って嫌われてるよなぁ〜。自分では普通にしてるつもりなんだけど、色々言われちゃって…。何かどうしたら良いか訳がわからないよ…。」
直樹らしくない弱気な発言にびっくりしたものの直樹も普通の人間なんだと…。
悪口を言われているのは知っていたけど
俺「そう?俺の周りの奴等は直樹のフャンが多いけど…。」
直樹「……」
俺「直樹は有名だから色々と注目されちゃって大変だよね。でもいちいち気にしちゃらちがあかないよ。」直樹「……」
俺「でも強い自分を演じていてもダメ。誰かには弱い部分をたまにはさらけださないと…。潰れちゃうよ!」
ふと横を見ると直樹の目には涙が溜まっていた。
俺「俺で良ければ今日みたいに呼んでよ」
直樹は入学以来今まであった俺の知らない色々なことを話はじめた。俺は直樹の心の痛みを知ると同時にそんなことを感じさせなかった直樹の強さも知った。
大人だな…直樹は…。
直樹は話終わると少し優しい顔に戻ってきた。いつもの横顔に俺は安心した。
直樹は目に涙をためたまま俺を見つめてきた。
俺「……」
金縛りにあったように動けない。直樹の顔が近づいてくる。