結局、自分の恋愛なんて上手くいかない。
フラれる可能性がないとは思ってなかった。
だけど、実際に相対して言われると、ただただショックで、真っ白になった。
恋愛下手だって分かってる。自分に魅力がないって薄々感じている。
だけど、俺は自分の気持ちに嘘をついたり、駆け引きしたり、上手く立ち回ったりなんてできないし。
ありのまま受け止めてくれる人じゃないと付き合う事なんてできない。
でもそんな面倒臭い奴と付き合いたいなんて、誰も思わないから。
俺は多分、これからも、誰とも付き合えないんだと思う。
俺は呆然として、フラれた理由なんて、聞こえちゃいなかった。
それでも、辛うじて覚えているのは、准と俺は性格が似過ぎていて、上手くいかない
別れたら元の友達関係に戻れない
それより何より、元々バイ寄りというか、男と付き合う事自体、気が進まないと言っていた。
今までの時間は、なんだったんだろうとぼやけた意識の中思っていた。
だけど、不思議な事に涙は一つも出なかった。
フラれてからも、准とは遊ばなければならなかったから、顔を見合わせる度、辛くて辛くて、しょうがなかった。
それでも何日か経って振り返ってみると、上手くいかなかった事に思い当たる節がある。
正月のケンカの件は勿論だが、その後も軽く言い合いになった事があった。
俺が谷の家で、好きだと言った件や、谷がご飯を作りに来てくれた時に、谷と結婚したら幸せだろうな、みたいな話を准が聞いたみたいで。
准は、谷が結婚とか真に受ける性格だから、その気もないのに振り回す様な事はしないでと言ってきた。 俺は振り回す気なんて、さらさらなかったし、率直な感想だったから、反発した。
でも受けいれてくれなくて最後の台詞が、
「俺の友達にちょっかいかけないで」だった。
俺はこの言葉に揺さぶらられ、准との壁を感じていた。
ただ、フラれる前はよくある、いざこざの一つくらいにしか、とられていなかった。
准はみんなに好かれたい、独占したいという想いが強く顕れている。
特に友達に対しての独占欲、仲間意識が強く、自分だけ遊べなかった、話題に取り残される、自分以外で盛り上がっている事がたまらなく嫌で。
というより、不安でしょうがない、みたいな一面がある。
正月あれだけ、大事になったのは、自分だけ悪者にされ、誰一人仲間がいなくなったという、切実な准の孤独の表れなのかも知れない。
そんな話を谷、みち、光一としていたら、やっぱり准の耳に入り、人のいない所で悪口を言った、となって、また絶交に近い状態にまでなった。
准のいい所はいっぱいある。だけど、フラれて冷静に考えてみると、やっぱり付き合っても上手くいかなかったと思う。
だから、結局仕方なかったんだ、、、という方向に位置付けしたんだけど、やっぱり頭で考える事と気持ちは全然違っていて、考えても考えても、心苦しかった。
いつまで経っても癒されなかった。
准の独占欲。これは高校で有った体験に由来するらしい。
准は裏切られたと表現するが、小学校からの親友が、他の友達と仲よくなってしまい、話す友達がいなくなり、休み時間も一人で過ごす様になったという。
みちや谷がいなかったら死んでいたというのを、谷から聞かされた時は、流石に悲しくて、うっ、となってしまった。
俺は俺だけは何があっても准を支えるんだと、意気込んでいた。
俺はその前にも准とは、一生友達でいると約束していたから、尚更その想いは強く抱いていたけど、、今は全くそんな自信はなくなっていた。
准の学生時代の要素で、彼女がいたという側面も浮き彫りになった。
いずれにせよ、付き合うというのは、難しかったのかも知れない。
だけど、俺は准に対して、もっとキツイ現実を味あわせられる事になる。
なぜ、もっと早くに気が付かなかったのだろう。
フラれてから一ヶ月は経っていただろうか。
准の家に行くと、光一がいた。
いつもと変わらない風景。だから、逆に気が付かなかった。
俺「光一さぁ、最近ほぼ来たらいるよね。苫小牧から来てるんしょ?列車代とか大丈夫なの?」
光一「バイトしてるから」
そんなやり取りだったから
俺「光一ってさ、苫小牧から通って大変だよね。こっちに住めばいいのに」
みち「光一、実家にほとんど帰ってないんじゃない?バイトもこっちでしてるし俺「実家帰ってないって?どこで寝泊まりしてるの?みち「どこって。准のうち」俺「そうなんだ。あぁ准の弟くん、岩見沢に行ったから、部屋空いてるんだ?」
みち「えっ?あんた何も知らないの?」
俺「知らないって、何を」
みち「准が光一と付き合ってるの」
パリーン
頭の中でガラスが砕けた衝撃音が聞こえた、、、
頭がわれそうだ、、
俺は准の家に詰め寄った俺「准くんさ、俺に隠してる事ない?」
准は不機嫌そうな声で、
「何?何の事言ってんの?」俺「光一と付き合ってんでしょ?」
准「誰から聞いたの?」
俺「みちから」
准「、、、」
俺「なんで言ってくれなかったのさ?」
准「絶対、のぶがなんか言うと思ったから」
俺「だからって、言わないとかなくない?」
准「もう別れたよ」
俺「えっ?」
准「遊びで一週間付き合っちゃおう、みたいなノリで付き合っただけだから」
俺「遊びでって。准くん俺とは、男と付き合うのは抵抗あるって」
准「だから、光一がまず試してみようって。俺ものぶの事好きだったんだよ。でもやっぱ、いろんな事があって、付き合えない、失敗するって目に見えてたから市ノ瀬の事で、こりごりしてるから」
俺「だからって光一と、、」なんで、光一なんだ、、
なんで、俺じゃないん?
准はそれっきり言葉を発しなかった。
俺は確信があった。
でもそれが当たっていたら俺はとんだお笑いものだ。だけど、確かめずにはいられなかった。
俺「准くんさぁ、合コンの1番最初の時の人気投票、誰に入れた?」
准「、、」
俺「光一じゃない?」
准「、、そう」
やっぱりな。
准は光一に入れていた。
分かった。
准が光一と付き合ったと言う話を聞いて。
みち→准 光一→愛斗
谷→俺 俺→准 准→光一 俺「最初っから光一じゃん准くん、、ひどいや。
むかつく」
扉を閉めた時、ホントの意味で、フラれた事を体感した。
そして、今まで泣かなかったのに、、フラれてから初めて泣いた、大泣きした。
うぅうぅぅぅ