その日から毎晩8時にコウスケと走るのが日課になった。
待ち合わせ場所はツタヤの中。明るいし、室温もちょうどよかったから。
俺も前はよくランニングしてたから、お気に入りのコースを教えたりした。
俺らは親友と呼べるほど仲良くなったし、お互いのこともわかってきた。
コウスケの家族は転勤族で今まで何度も地方を転々としてきたらしく、これで転校は4校目らしい。そう話すコウスケは少し寂しそうだった。
小3から野球を始めて、甲子園は諦めたけど、大学でも野球は続けると言う。
大学へは体育推薦でいくつもりで、そのために日々筋トレやランニングに励んでいるのだと。そのせいか、頭が良いとはいえなかった(笑)
俺はコウスケのことをもっと知りたいと思った。
俺のことをどう思ってるかとか。
コウスケは俺のことはあまり聞いてこなかった。それなのに、俺の気持ちを察するのが上手かった。
ほとんどがしょうもない話で、たまに真剣な話もあったけど、なぜだか恋愛についてはお互い避けてた。
俺は自分が女に興味が湧かないから避けてたのだが、コウスケがそういう話をしてこないのが不思議だった。
12月だった。
俺は10分遅れてツタヤに着いた。コウスケはだいたいCDを視聴して待っているのだが、今日はそこにいない。
しかたなくDVDコーナーをうろついていると、コウスケが18禁コーナーに入っていくのが見えた。
コウスケも男なんだなぁ。と思い、なんだかガッカリしたが、それは違った。
俺は驚かしてやろうと思って近づき、声を低くして言った。
「こら!ここは君が入る場所じゃないぞ!」
俺はふざけてそう言ったのだが、コウスケはいつもと違った。
「お!ジュンキ。お前こういうの興味ある?」
そう言って渡されたのは、裸の女性が何人もいるDVDだった。
俺はどう反応すればいいのか困惑した。
「は?そりゃ多少はある…かな。でもまだそんな年じゃないから俺は遠慮しとく」
嘘をついた。いつかは本当のことを言いたいけど、言ったところで良いことはないんだ。
「そっかぁ。じゃあお前こういうの見ると、立つの?アソコ」
俺はコウスケがふざけているのかと思ったが、コウスケを見ると真剣な表情だった。
「え?(笑)なんでそんなこと言わんといけ…うわっ!おい!コウスケ!?」
俺のアソコをコウスケが握ってきた。俺はビックリしてその手を振り払うこともできず、周りに人がいないか確認して、コウスケを見た。
「フニャフニャだぞ?立ってないじゃん、ジュンキの」
俺は1歩さがって、やっとその手から逃れた。顔が熱くなるのがわかる。
「俺…だって……ていうか触んなよ、急に」
俺は動揺を隠せずに、下を向いた。コウスケは試すように俺を見ている。
コウスケの視線をと感じる。
沈黙だった。
「………俺も。たぶんジュンキと一緒や思う」
「…え?何が?」
「おし!とにかく走るか!」
コウスケは俺に背を向けて歩き出した。
俺は状況を理解できずに3歩ほど距離を置いてコウスケについていく。
俺も?一緒?
何の話だ?
ていうかバレたのか!?
俺達は外に出て、いつものコースを走り出した。