うぅぅ、、
辛い
マジ辛い
こんなに好きなのに
ずっと准の事想ってたのに付き合えると思ってた
なんでだよ
なんで光一なんだよ
俺の事好きだっていってたじゃんかよ
酷いよ
ムカつく
ムカつくよ
うっっ、、
ツライ
淋しいよ、、
俺は帰ってからずっと布団の中で泣きじゃくっていた。
准との思い出が頭の中を駆け巡り、涙がずっと止まらなかった。
准とのこの一年はめちゃめちゃ濃かった。
いっぱい遊んだ。
ケンカもした。
だけど、どれも俺には新鮮でまぶしくて、楽しくて、大事な思い出で。
その中心には准がいて。
准の笑顔がこびりついて頭から離れない
准、、
准も俺の事を好きだと思ってた。
お互いに想いあってると思ってた。
だけど、それは全部、独りよがりな勝手な思い上がりで。
ずっと独りで舞い上がっていただけで。
いっつもそうだ。
誰も俺の事なんて好きになってくれない。
そんな事を考えれば考えるほど、情けなくて。
ミジメで。
すごく淋しくなった。
マジ、涙が止まらなかった
それから、一、二週経ったけど、気は全然まぎれなくて、ふさぎ込んでいた。辛いのはなくなったけど、ぽっかり心に穴が空いた感じで。
一人でいると孤独で淋しさがどんどん募っていく。
准達とも遊んだけど、
この頃の俺はとにかく沈んでいたから。
みんなも知っていて、気を使ったりして。そんな気を使われるのが逆に辛くて。自然と誘わなくなったし、誘われなくなった。
俺が席を外した時に、光一が言った、のぶがいると重いんだけど、が決定的だった。
距離を置いてからどのくらいたっただろう。
俺は当時流行っていたmixiを紹介され、准のページを覗いてみた。
そしたら、准と光一が昨日付き合ったと書かれていた。
やっぱりな。
俺は思ったよりショックを受けなかった事に驚いた。
冬来たりなば、春遠からじ。
なんて前向きな言葉なんだろう。
まだ冬が来たばかりなのに春は近いなんて。
雪が融け、春が近くあるのに真冬にある自分とは真逆な精神状態と笑いたくなる 准と会うまでは一人でいる事なんて当たり前で、そこに淋しいなんて感情はなかった。
例え誰かに遊ばれていてもいつもの事と割り切れていた。
だけどもう俺は、淋しい感情にとうとう耐え切れなくなって。
俺は愛斗に電話した。
俺は愛斗を振った。
傷付けた。
俺は最低だ。
自分の事ばっか。
だけど、声が聞きたい。
話を聞いてもらいたい。
淋しくて淋しくて。
愛斗に電話した。
だけど、愛斗の電話はもう使えなくなっていた。
准には聞けなかったから谷に聞いた所、去年の年末には既に海外に発っていたという。
俺はクリスマス公演の後愛斗の様子がおかしかった事に、今更ながら気がついた。
妙に感情が高ぶり、フワフワと落ち着きのなさ。
あの切羽詰まった、切なげな表情。
俺「いつ札幌に帰ってくるの?」
谷「分からない。聞いたけど、帰ってこれるかも微妙だって言ってたから」
愛斗はあんなにも必死に想ってくれてたのに、自分は傷つけた相手に慰めて貰おうとしてたなんて、思い上がっていて、傲慢で、情けないと恥ずかしかった。
それから俺はそんな自分が嫌で強くなろうと決めた仕事もフットサルも遊びも前向きに、頑張った。
そして、愛斗に会えたら感謝の気持ちと俺の気持ちを伝えようと思った。
愛斗の事が好きだという事を。
いつ会えるか分からないし会えないかもしれないけどそう心に決めた。
4月の半ば過ぎだったろうか。
准がうちに来た。
話があるという。
俺は大分立ち直っていたから、家に上げる事ができた准「のぶ。ごめん。本当にごめん」
准は泣きながら謝ってくれた。俺との事、光一の事。そんな准の姿に心打たれて許す事ができた。
心にずっと引っ掛かっていた、准へのわだかまりがやっと融けた。
いや、准への気持ちを忘れる事が出来そうな気がした。
准「のぶ、市ノ瀬の事好きなんでしょ?」
俺は、いきなりで戸惑ったが首を振った。
准「そっか。俺、市ノ瀬の事で話したい事があるんだ俺「何?」
そして、語り初めた。
准「のぶさ、いつ市ノ瀬が自分の事を好きになったのか分かんないって言ったよね。合コンの日と思ってる?実は違うんだ」
俺は准が何を言うのか、皆目見当がつかなかった。
「俺と市ノ瀬と付き合う前の話なんだけど。
掲示板で知り合って、何回か遊んだ。
正直タイプだったから、付き合いたいなと思ってさ。好きな人いるの?って聞いたら、振られたって。
こんな格好よくても振られるんだ、って笑ったら、正確には連絡が取れなくなったって言ってた。
市ノ瀬は恋愛下手で、不器用で、引っ込み思案で、嫌われたくないから、すぐ自分から引いちゃうんだって俺、どんな奴か気になったから、写メ見せてって言ったら、恥ずかしいのか、勝手に見せるのはまずいだろうって。
俺はもう会う事ないんしょ?チラッと見せてよ!って迫ったら、見せるくらいなら、と言って見せてくれたハッキリ言って、可愛いと思った。で、俺は、俺とどっちがかわいい?俺じゃダメかな、、って言って、、付き合った。
写真はのぶだったよ。
別れてからは会ってなかったけど、合コン募集で、市ノ瀬の写メと同じ奴からメールが来たから、教えたんだ。そしたら、来たいって多分、ずっと会いたいかったんじゃないのかな」
、、、そうなんだ。
愛斗はずっと前から俺の事を。だけど、なぜだろう、俺は愛斗に会った事を思い出せない。
俺「准くんありがとう。俺さ、やっと立ち直る事ができるよ。准くんも、光一と仲良くね」
准「伸之、、ごめんね」
俺たちは抱き合った。
明日からは、また笑顔で遊べるだろう。
俺はその日を境に淋しいという感情から、解放された。そして、いつもの日常に戻っていく。
今日も仕事を終えて、家路に向かう。
自分の家の側の公園にもようやく桜が色付いて来た。まだ、それほど大きくはない蕾だが、綺麗に咲く確かな躍動の息吹を感じる事ができた。
早く、桜が咲かないかな?なんて、見つめていると、「何してるんだよ」と声がした。
びっくりして振り返ると、、えっ?愛、、斗?
愛斗がいた。
俺「まっ、愛斗?いつ?、、どうして?」
愛斗「明日。明日空けとけ」俺「えっ、、まって」
愛斗は立ち去ってしまった
俺「まださ、早いよ」
愛斗「本当だな」
俺達は円山公園の桜並木にいた。
5月とは言え、桜が満開までには、まだ時間がかかりそうだ。
だけど、日に日に暖かくなる気候で、最高に気持ちいい。
俺達は近くのベンチに腰をかけた。
俺「それにしても、急に桜を見に行こうなんて、どうしたのさ?」
愛斗「なんか急に日本が懐かしくなって」
俺「半年くらいで、なにセンチに浸ってんのさ」
愛斗「ははっ本当にな」
と言って笑う、愛斗の笑いはちょっと渇いていて。
それに、最後に会った時より頬がこけてて、心配になってしまう。
俺「痩せた?」
愛斗「かもな。食欲なくて」俺「ちゃんと食べなきゃだめだよ」
愛斗「細い伸之に言われるとはね」
やっぱりなんだか、もの悲しく映る。
俺「愛斗、なんかあった?」愛斗「別に」
俺「別にって、ちゃんと言ってや」
愛斗「なんでもない」
と言って、俺に抱きついてきた。
なんでもないはずがない。愛斗「会いたかった」
、、愛斗。
俺も会いたかったんだ。
俺は答える代わりにギュッと抱きしめた。
そのまま、背中を揺すった俺は他の人に見られてないか心配もあったけど。
少しすると、ゆっくり俺から離れた。
愛斗「准に告白したのか?」俺「うん。でもだめだった准は今光一と付き合っているよ」
愛斗「そっか」
、、風が通り抜けた。
落ちた桜の花びらが右往、左往する。
しばらく無言になった。
愛斗「風が暖かくて気持ちいいな」
俺「うん」
愛斗「俺、やっぱ伸之の事が好きだ。
会えなくなって分かった。自分がどうしたいか。
今までの俺は、いっつも大事な所で引いてしまって。クリスマスの時もそうだった。
めちゃ後悔した。
だから、俺、絶対もう諦めたくないんだよ。
伸之、俺、伸之の事が好きだ。大事にする。だから、俺と付き合ってください」
俺は愛斗の純真で、真摯で深い愛情に心が震えた。ありがとう。愛斗。
俺「愛斗さっ、合コンで、紙の人気投票した時、俺に入れてくれた?」
愛斗「、、ああ」
俺「あの時からずっと想ってくれてたんだ」
愛斗「いや、好きになったのはその時じゃなくて」
俺「それより、ずっと前なんだってね。准から聞いたよ」
愛斗「えっ?」
俺「俺、愛斗と合コンより前に会ってたんだってね。ゴメン。俺、それ覚えてなくて。合コンで初めてって思ってた」
愛斗「まぁ覚えてないっていうのは、すぐ分かったけど、全く覚えてないって、様子だったから、ショックだったんだぜ」
俺「ほんとごめんね。だけど、准からその話聞いて
ずっと愛斗が俺の事想ってくれてるっていうのが分かった」
愛斗「ずっとじゃないから合コンで、会いたかったのは本当だけど、好きになったのは、合コンより後だから」
俺「笑そっか。でも俺の事好きだって言ってくれて、すごい嬉しかった。それに愛斗、そんな事があったなんて一言も言わないし。だから、逆にその想いがヒシヒシ伝わって」
愛斗「、、」
俺「愛斗ありがとう。
俺、愛斗の優しさに何度も救われたよ。
俺、今ハッキリ分かった。俺、愛斗の事好きだって」愛斗「、、じゃあ」
俺「俺、愛斗の事が好き。好きなんだ。だけど、」
愛斗「、、だけど?」
俺「俺、愛斗と付き合う事はできない」
愛「なんで?なんでだよ?」俺「俺さっ、、愛斗を振って准に告白したんだよ?
めちゃくちゃ愛斗を傷つけた。
なのに、准に振られたからじゃあ、愛斗にする、なんて絶対できない。
失礼すぎる。愛斗に失礼すぎるよ」
愛斗「失礼すぎるって、俺何も気にしてないから」
俺は首を横に振る。
俺「ごめん。愛斗。俺付き合う事はできない。愛斗が好きだけど、俺の中にはまだ僅かだけど、准もいるんだ。」
愛斗「、、やっぱ無理なんかよ?」
俺「ごめん。本当ごめん。愛斗、ごめんね」
桜の下に佇む僕らは声を潜めて泣く事しかできなかった。