「東くんって付き合ってる人とかいるの?」
「俺?いないよ」
「俺じゃだめかな?頑張るから」
「あはは!またまた笑
こんなおじさんのどこがいいのさ笑裕太くんにはもっといい人がいるって笑」
「全然おじさんじゃないから。てか東くんよりいい人なんていないし。お願い」俺は困ったな、と思いつつも、少しだけ嬉しかった。「ごめんね」
「、、好きな人いるの?」
「うん、ずっと想っている人がいるんだ」
愛斗。
俺、愛斗と別れてから、ちょっとだけ、色んな事頑張ってみたよ。
全然モテなくて、誰も中身なんてみてくれなかった。 だけど、今は年もとったし、若い子の曲なんて分かんないし、温度差も感じたりするけど、告られたりするよ。年上の受けなんて、需要ないと思ってたけど。 いい年の重ね方をしたのかもね。
俺、今の方が若い時より、全然自信あるよ。
愛斗。
僕たちの歯車は微妙にズレていて、付き合う事はできなかった。
全部、俺が悪かったんだけど、気づいた時にはどうしようもなかったんだ。
1番大切な人は1番近くにいる。
そんな当たり前の事が。
1番俺が欲しかったものなのに。
1番俺が憧れていたものなのに。
あの時に戻りたい。
愛斗とやり直したい。
そうすれば、絶対うまくいくのに。
覆水盆に返らず。
太公望、、残酷すぎるよ。
あの桜の下から半年以上経った。
俺は25になり、お肌の曲がり角(死語)
准は光一と別れて、今は嘉彦(よしひこ)と付き合っている。多分、今年の終わりには東京に行くと思う。
谷は、ノンケの人と付き合った。結婚の前提でだそうだ。
俺は准よりも谷の方に、寂しく哀しい想いをした。
幸せになって欲しいと真剣に思った。
一方、光一はやっぱり愛斗が忘れられないらしく、あの後、また愛斗に告白したらしい。
俺は旧態依然、変わりはなかった。
ただ、最近ゲイバーに行きだして、楽しんでる。
愛斗は、、今は渡欧中。ドイツの楽団でマストを振りながら、勉強もしてる。今年帰ってくるか、こないか。
まぁ俺の事好きだったら誕生日に帰って、祝ってくれるよな。
それくらいしてくれたら、可愛いげもあるのに。
それより何より、愛斗には好きな人がいるようで。
どうやら向こうの人(ドイツ人)らしい。
光一が言っていた。
ちょっとムカついた。
俺の事好きだって言ってたのに。
大体、ホントに好きだったら、半年くらいで変わるわけないじゃん。
別に全然気にしてないけど、、、ああ、今日もまた飲みに行こうっと。
その時、一通のメールが来た、、、愛斗だ。
俺「いっつも唐突過ぎるんだって。前もって連絡とかないの?」
愛斗「飲みに行こうぜ」
俺「あのねぇ俺の話聞いてくれてるわけ?」
愛斗「悪かったって」
俺「飲みに行くってどこさ」愛斗「ゲイバー」
俺「ゲイバー!!?」
愛斗の口から出るとは驚きだ。
愛斗「いっつもいってんだろ?」
俺「いつもじゃないし」
札幌で1番オシャレな「LA CLUB」で飲んだ。
愛斗が帰ってきた理由が、雪を見たかった、なので、ボンボンの考えている事はよく分からんと思った。
それと、マスターが、
「のぶくんがいつも言ってる片思いの彼?」
俺「ち、違いますよ。」
「でも、のぶくんが好きになるの分かる気がする。ちょっと意外で、見直した」俺「だから、違いますって」なんて赤面したりして.
トイレから戻った愛斗が
「どうした、顔赤いぞ」
なんて言うから「うるさい」と返す。
こいつがどういうつもりで帰ってきたのか知らないけど、俺はこの半年、淋しくてしょうがなかった。
全然、連絡もくれないし。だから、なるべく愛斗の事は考えないようにした。
そうでないと寂しくて寂しくて、どうにかなっちゃいそうで。
だから、そんな気も知らず飄々と俺の前に顔を出す、愛斗の態度にどこか醒めてしまう自分がいる。
愛斗「俺ん家行こうぜ」
俺「やだよ。もう遅いし帰る」
愛斗「うるせー行くよ!」
、、こうなるとダメダメだ前もこんな事があったような。
愛斗の家に着き、ビールを一、二本空けると、愛斗がふと寝室に向かった。
俺「愛斗、寝るの?俺、帰るよ?」
愛斗「寝ない。。。」
えっ?
一瞬で眠りに落ちた。
はぁ、マイペースだなぁ。俺はどうしようか考えた。帰るのもめんどい。
愛斗「泊まってけ、、」
起きてるんじゃん。
いや、やっぱ寝てる。
てか、寝るってベッド??もう考えるのが煩わしい。酒のせいもあるかも。
俺は上だけ脱いで、ベッドに入った。
愛斗はベッドカバーの上、俺は布団の中。
流石に真冬にかわいそうかと思い、愛斗を動かし、中に入れる事に。
てか、めちゃ重いんですけど。
やっぱり、すやすや眠っている。
俺も、ようやく寝れる。
目を閉じると、「伸之、キスしたい」と言ってきた。こいつ、、
俺「チューだけだかんな」
俺は愛斗に唇を重ねた。
分かんない。
なんでか分かんけど、
今までの想いが、少し報われた気がした。
そして、愛斗の手が俺のシャツへと進んでいく。
俺「調子にのるな!!」
俺は手を思いっ切り、はたいた。
朝起きると俺は愛斗に腕枕されていた。
腕枕、、初めてかも。
まだ愛斗は寝ていた。
俺は仕事があるから、帰り支度を始める。
てか、愛斗の寝顔。
めちゃくちゃ不細工で、口が開いている。
髪もグチャグチャで。
笑っちゃうんだけど。
准の寝顔とは全くの正反対だ。
でも、そんなギャップにちょっとドキっとする。きっと俺しか知らないんだろうな。
あいてた口が閉じた
唇が厚い。
分厚い。
うっ、、
吸い込まれる、、
き、昨日、腕枕してくれたお礼だからね、、
俺は、、なんだか急に恥ずかしくなって、足速に家を後にした。
今度、会えるのいつさ?
俺やっぱ堪えれらないよ。
愛斗は結局、この後すぐドイツに戻った。
愛斗と俺。
多分、上手くいかない。
それに向こうは彼氏がいるんだし。
もう潮時なのかもしれない
季節は流れて、
また巡り巡って桜の季節がやって来た。
俺は既に愛斗の事は遠くに忘れていた。
ゴールデンウイーク中、テレビを付けるとニュースで札幌の桜の満開を報じていた。
桜、、何だろう。
この切ない感じ。
俺は、今までにない桜のざわめきを感じた。
なんだろう。
桜は何を伝えようとしているのだろう。
何かつっかえてるような粘っこい嫌悪感。
その焦燥は次の瞬間、朧げながら正体を見せる。
忘れている。
俺は何かすごく大切な事を忘れている。
その何かは自分ではわからないけど、絶対忘れては行けない事だって、身体が疼いている。
何だ?
わからない。
俺は携帯のスケジュールに目を向ける。
変わった所はとりたててない。
気のせいか?
いや、5月5日、5月5日にアラームがある。
5月5日、なんだ?
なんの予定だ?
誰かの誕生日?
いや、自動でスケジュールされるはずだ。
会社の行事?
そんなんじゃない。
そして5月5日当日。
やっぱり何も思い出せなかった。
俺は、休みの日を買い物に費やしていた。
ふと街中のビルのエキシビションに目を向ける。
夕方のニュースが流れる。円山公園の桜が満開になっている映像。
なんだ。
既視感。
こんな事が前にもあったような。
うっ、、、
俺「ゴメン、ほんとゴメン愛斗。おれさぁ、いつか愛斗の事が100%好きだって言えるようになったら、俺から、告白するから。
もしさぁ、そん時、まださぁ愛斗が俺の事好きだったらさぁ。その時は、、」
俺は、全力で駆け出した。信号も無視した。
走って走った。
地下鉄に滑り込む。
なんで。
なんで、今日なんだよ。
なんで、今思い出すんだよ
愛斗「来年の5月5日15時ちょうど。この桜の木の下。もし、伸之が俺の事を好きになったら来て。俺、待ってるから」
俺「来年って。絶対忘れてるって」
愛斗「だけどもし、覚えてたら、、多分二人の失った時間取り戻せるから」
俺「失った時間?」
愛斗「ああ、多分そこから全て始まる」
俺「もし、お互い忘れてたり来れなかったりしたら」愛斗「それだけの運命だったって事
だけど、もしお互い会うことができたら、、」
16時05分。
もうだめじゃん。
間に合わなかった。
終わった。
なんで、なんで、もっと早くに思い出せなかった?
俺は泣きながら、走っていた。
全然、間に合わないじゃんか。
もう遅いよ。
それでも、必死に走った。絶対、いるはずがない。
わかってる。
俺だって忘れてたんだし。あっちだって、ドイツ人とイチャイチャして、絶対そんな事覚えちゃいまい。
だけど、なんで俺は走るんだ?
行くんだ?
向かってるんだ?
いないって分かってるのにくそっ。
何を期待してる?
ばかみたい。
やだよ。
辛いよ。
もう遅すぎるってわかってんじゃん。
行ってばかをみて、傷ついて、泣いて、叫んで。
行かなくていいじゃん。
ばかじゃん。
いるはずないじゃん。
いるはずが。
てか、、
いてよ。
待っててよ。
俺に告らしてよ。
頼む。
お願い。
はぁはぁはぁ、、
桜の木に到着した。
一年前と同じ場所、同じ時間。
違っているのは曜日だけで違っているのは誰もいないだけで。
違っているのは桜がまばゆいくらい、輝いているだけで。
俺しかいないだけで。
誰もいない。
やっぱりいない、、
いないじゃん。
うぅうぅぅう
、、、、
愛斗っ!!!
、、、、
愛斗、、、なんで、、
なんで、、
えっ、、
なんで、、
、、いるんだよ。
うそ、、
愛斗、、なんで、いるの。わぁーーゎわ
うぅうーー
わぁあーー
俺は全力で愛斗に、愛斗の胸に飛び込んだ。
俺「愛、、うぅぅ、、なんで?なんで」
愛斗「お前こそなんで来たんだよ?」
俺「だって、だって、愛、斗が、待ってるって」
愛斗「サンキュー、伸之」
わあぁーーわぁあ
なんでいるのさ。
俺、絶対いないって思ったのに。
逢いたくて逢いたくて逢いたくて。
でも、絶対もう会えないって諦めてたのに。
愛斗っ、、愛斗っ
俺、、俺、、、
ありがとう、ありがとう、わぁーーわあぁーー
わぁあああーー
僕と愛斗を包み込む様に上昇していく春風は、体温と涙を桜とともに舞い上げていく。
春風
、、暖かくて
でも湿っている
昇っていく風は
僕らの未来をきっと、、
ジェットストリーム
俺「愛斗、俺愛斗の事が好き。だから、俺と、、
愛斗「伸之、俺と付き合え」俺「おっ俺のセリフ、、」
愛斗「三回目振ったら許さねえかならな」
俺「えっ、」
愛斗「俺が好きなんだから」俺「俺、、もうだめ、、、泣くから、、」
愛斗「ははっ」
俺「えーん」
俺はこの温もりを二度と離さないだろう。
生きてきて、今1番幸せだって、心からそう思える。愛斗、俺、愛斗の事めちゃ大事にするから。
だから、俺と一緒にいて下さい。
一緒にいてくれるだけでいいから。
俺の最後に愛する人へ。
東伸之