10月も半ばになり冬へのカウントダウンが始まりそうな頃、
僕はアツシに借りたマフラーを失くしてしまったのだ!
僕はアツシに「本当にごめん」と誤ったが、その「本当に」が頭にきたらしく、
それ以来アツシとは「本当に」仲間には戻れなくなってしまった。
と言うのは、前にもイザコザがあったが謝って伝わったし、逆の立場になることもあったから崩れることはなかった。
カズキは僕を庇ってアツシには「ケンタもああ謝ってるんだし許したら?」と宥めていたが逆効果になってしまい、カズキとアツシも犬猿の仲になってしまった。ユウヤとタクマは一点張りのアツシとどうしようもない僕に愛想を尽かしたのか、
いつの間にか僕を遠目で見る存在になっていた。
僕はその後カズキとともに他の友達としばらく仲良くしていたが、盗難事件が流行り
その犯人が僕なんじゃないかというクラスの雰囲気になってしまった。
その結果僕は無視される人が増え、いつしか1人になってしまった。
そんな中僕は人生で初めて“呼び出し”を食らうことになりました。
(アツシが野球部の先輩と他愛のない会話の中で僕が出て来て、「懲らしめようか」
という軽はずみな内容から始まったことを後に知りました。)
ある部活のないテスト週間の日、下校しようと下駄箱から靴を取り出すと靴の中に
一枚の紙がクシャクシャに入っていた。不思議に思って広げてみると
“渡したいものがあるのでこれから○○公園に来てください”
と書かれていた。誰だろうと思ったが、
行かないと待つ側が可愛そうだなと思い、
ちょうど塾もなかったし公園に寄ることにした。
公園についてしばらく定番の(?)ブランコに乗っていると
(全校集会のときとかに)見たことがあるけど話したことがない
僕より身長が20cmは大きい3年生が目の前に現れた。
「え?」と思って「何ですか?」と聞いてしまった。
3年生の先輩は1人だったが体格もよく力も僕より強そうだったので
あれよあれよと薄暗い茂みに連れ込まれてしまった。
「お前、カズキになんかした?」
「え、えっと…マフラーを失くしてしまいました」
「あのマフラー形見らしいぞ。」
「え?」そんなことカズキから一言も聞いてなかったけど
失くしたのは本当にいけないことだから…と頭の中で謝罪の気持ちが駆け巡った。
「もし逆の立場だったら君はどうするかね?」
「わかりません」
そう答えると、軽く腹を殴られた。
「まずはこうするんじゃないかな」軽く微笑んでいる。(怖い…)
「カズキはそんなことしないと思います」
「は?なくした癖にそんなこと言う権利あんのか?」
「ごめんなさい」