俺は、ひとめぼれする性質ではない。間違ってもノンケには。
そんなことしたって時間の無駄である。
ただ、【その人】は、なんというか・・・。
カッコいいのは確かである。俺もよりも少し身長が高くて、といっても180センチはないだろう。体格もゴツイわけでもなく、ただ肌が白くて透き通るようにキレイである。眼鏡をしている姿も、知的さがより一層増す感じがするし、逆に、眼鏡を取った時のくっきりな二重にもヤラレてしまう。
そしてなにより、来る日も来る日も机にしがみつくように勉強している。
俺は昔から一生懸命に何かに頑張っている人が好きだ。
多分、自分も部活をずっと頑張ってやってきたからだと思う。
ただ、高校時代、ハンド部の後輩で毎日毎日、俺にシュートの練習をお願いしに来た後輩がいた。練習を付き合ううちに、そいつの事が好きになってしまい、本当に辛い想いをしたことがあった。
だから、それ以来あまりそういうことで人を好きになることはなかったのだが、
久しぶりにヒットしてしまった。ヒットというかホームランだ。
【その人】をチラチラ見ながら、そんなことを考えているもんだから、勉強は進むはずはないし、【その人】が顔あげた瞬間に目が合うとドキドキしてしまって勘違いな妄想をはじめてしまう。
向かいの席に座って、ずっとチラチラ見ているのだから、目が合うのは当たり前なことで、それでも良い気分であらぬ妄想をしている自分がいた。
21:50
閉館の音楽が流れる。
その人も帰りの支度を始める。その人は、いつも図書館が閉館すると院生だけが夜中まで使える自習室に向かってしまう。【その人】は今日も、荷物を持ってそそくさと行ってしまった。
俺もしぶしぶ帰り支度。
(あ〜〜、今日は声くらい聴きたかったなーー)
なんて考えながら、図書館から退館して、施設から出るため1階に向かう階段を上っていると
踊り場に【その人】を発見した。しかも、女と二人でしゃべっている。。。
今まで、といってもこの1週間くらいだが、男友達と喋っているところは見たことはあったが、女性と喋っているところを見たことがなかったので、何とも言えないショックを受けてしまった。
ノンケに恋すると、こういう事があるから嫌なんだよ。。。
そんなときに好きな人のそばに行きたくないのだが、その踊り場を通らなければ施設の出口に出れない。
仕方ない。
何も考えないように、その踊り場を通りすぎようとした瞬間
ビリッ!!!ドサドサ
踊り場を通り過ぎようとした瞬間に、階段の取っ手に荷物のバーバリーのショップ袋が引っかかってしまい、紙袋はあっけなく破れ、中に入れていたレジュメやら六法が階段を滑るかのように散乱してしまった。
(ひゃーーーーー、最悪だーー!!!)