…続き。
「もしかして、前から俺のこと気になってた?」
Sはいたずらっぽい笑みを浮かべて僕を見ています。でも、目は妙に真剣なんです。
「なんでそう思うの?」
僕は、少しタジタジとなりながら答えました。もう何ヶ月も友達付き合いをしているけど、彼の綺麗な顔にまっすぐ見つめられると胸が高鳴り、それだけで酔いが醒めてくるみたいです。
「さっきさあ、俺がいっつも違う女連れてるの見てたって言ってたじゃん。俺、今のゼミ入ってから、女とは全然付き合ってないんだ。おまえ、ずっと前から俺のこと見てたってこと?」
彼は覗きこむように僕の顔を見ます。
(…いや、おまえハデな見た目してるからさ、いつも違う女連れてそうなイメージだし。冗談のつもりで言っただけ)
そんなことを言ってごまかそうかと思いましたが、なぜか口が動きません。ホモのストーカーとでも思われたらマズイ。否定しなきゃ。そう思うのに、ただ胸だけがドキドキしてくるんです。
「ふーん、図星だな」
ついにSはそう言いました。
キモいんだよ、おまえ。そんな言葉が来るのではと覚悟しました。
…でも。
「なんだ、やっぱりKも俺のこと見てたんだ」
彼はそう言いました。ちょっと潤んだような目で、僕に近づきます。
「…え?」
「Kさあ、○○でバイトしてただろ」
○○とは、僕が去年働いていた、大学そばの少し大きな書店です。
「俺、あそこによく立ち読みに行ってたんだ。そしたら、かわいい顔した店員がいるなと思って。行く度に楽しみにしてたんだよ。それがお前。あとで大学の中でもお前を見たから、ああ同じ学校なんだって。おまけにゼミまで一緒だし、俺まっさきに声かけちゃったんだ」
僕は彼の言葉の意味がわからず、ひたすら、え?とか、は?としか言えませんでした。
Sは続けて言います。
「なんだ、これだけ一緒にいたんだし、Kならとっくに気づいてると思ったのに」
「な、何が」
「俺、バイなんだよ。」
そう言って、Sが僕を抱き寄せてきました。
…続きはまた。