…続き。
僕を抱き寄せたSの腕は、細いのに筋肉質で、僕にはほどくこともできないくらい力が強いのです。
「おまえ、酔ってるだろ」
Sが僕をからかっているのかと思い、そう言いました。
「うん、酔ってるよ」
「じゃあ…」
「俺、これでも小心者なんだ。酔ってなきゃ、こんなことできない」
目の前にあるSの顔は、少しの余裕もないくらい真剣でした。
「…前から、こういうことしたかったんだ。Kと」
彼の唇が、僕の口に迫りました。
あんなに憧れてたSなのに、いざ迫られると頭が混乱しました。このまま好きにされてもいいと思ったのに、なぜか僕は彼のキスを避けてしまいました。
「あ。…ごめん」
Sが言いました。
「嫌、だった?」
Sは叱られた子供みたいな顔になっています。
「そうだよな。急にこんなことして。嫌に決まってるよな。俺、馬鹿みてえ」
Sはごまかすように笑いましたが、目はひどく悲しんでいるようです。
「違うよ。嫌じゃない」
「…え」
「少し驚いただけ。好きにしろよ。早く」
僕はSの悲しんだ顔を見られなくて、とっさにそう言いました。
彼はまた僕を抱き寄せ、こう言いました。
「俺なんかにいきなりこうされて嫌だろうけど、今晩だけ許して。Kと、本当にこうしたかったんだ。許せないなら、俺もうKの前に現れないよ。夏休みが終わった後期日程から、ゼミ変えることもできるだろ。Kのいるところから完全に消える。だから今晩だけ…、お願い」
(そうじゃない。俺だって、すごい嬉しいのに)
そう言いたくて、僕のほうからSにキスしました。
Sは一瞬驚いたようでしたが、すぐに僕の唇に応じ、やがてSのほうから舌を差し込んできました。
お互いの舌を確かめるようなキスから、唾液がびちゃびちゃと音を立てるようなキスに。
それだけでもすごく気持ちがよくて、僕は何度も、「あ…、ぁ」と声を出してしまいました。
気がつくと、Sが僕を上から見下ろしています。ホントに気づかないうちに、僕はカーペットの上に押し倒されていたんです。
…続きは、また。
次が最後になるかな。